2010年12月、東京都大田区内の都道で乗用車を運転中に歩道乗り上げ事故を起こし、歩行者とクルマの同乗者など7人を死傷させたとして、危険運転致死傷罪に問われた21歳の男に対する裁判員裁判の初公判が5日、東京地裁で行われた。被告は蛇行運転を否定。弁護側は危険運転罪は成立しないと主張している。
問題の事故は2010年12月26日の午後9時45分ごろ発生している。大田区田園調布本町付近の都道を走行していた乗用車が前走車を追い抜いた際にスピンし、コントロールを失ったまま路外に逸脱。道路左側の歩道に乗り上げ、信号待ちをしていた人たちに突っ込んだ。
この事故で歩道にいた9歳と5歳の男児が収容先の病院で死亡。2人の男児の祖父母が骨折などの重傷。事故を起こしたクルマに同乗していた男性3人が軽傷を負っている。警察はクルマを運転していた男を自動車運転過失傷害の現行犯で逮捕した。
その後の調べで、男はクルマを運転中に車内で流していた音楽に合わせ、何度も前走車を追い抜いていたことが判明。周囲からは蛇行しているように見えていたこともわかった。制限速度を大幅に超過した状態での走行が原因で事故に至った可能性もあり、検察は直線路の事故としては極めて異例だが、罪状を危険運転致死傷罪に変更した上で男を起訴していた。
5日に東京地裁で開かれた裁判員裁判の初公判で、被告の男は「事故を起こしたことは間違いないが、蛇行運転はしていないし、するつもりもなかった」として、罪状の一部を否認した。
検察側は冒頭陳述で「前走車を追い抜こうと急ハンドルを切った際にクルマがスリップし、制御できない状態に陥った」として、制御困難を理由とした危険運転罪の成立を主張した。
これに対して被告弁護側は「事故直前の速度は70km/h程度だった」と主張。事故原因についても「中央分離帯への衝突を回避しようとした際に発生しており、制御困難な速度ではなかった」と、危険運転罪の成立可否について争う姿勢を見せた。