伊フィアットグループは16日の臨時株主総会で、2011年1月に行なう重商用車部門の分離を正式に承認した。新会社の名称は、「フィアット・インダストリアルS.o.A」で、11年1月3日に上場する。
従来の重商用車「イベコ」、建機・農機の「CNH」のほか、フィアット・パワートレイン・テクノロジー社の船舶用エンジン部門を傘下に収める。
いっぽうの乗用車部門は「フィアットS.p.A.」とし、フィアット、ランチア、アルファロメオの主要3ブランド、マセラティ、フェラーリのほか、フィアット・パワートレイン・テクノロジーズ社における船舶エンジン以外の部品製造業務、コマウ(工機)およびテクシッド(部品)を包括する。
これまでにグループ全体が抱えた負債50億ユーロ(約5650億円)は、両社で25億ユーロずつ折半する。また、従来の株主が保有するフィアット株は、ふたつの新会社の株式に1対1で分割される。
フィアットS.p.A.は主に乗用車に集中することで、資本提携先の米クライスラーとともに、より機動力と競争力ある経営を実現する。計画では14年までに年産600万台を目指す。
フィアット・グループのマルキオンネCEOは、「分割によって誕生するふたつの企業は、株式市場においてより自由な展開がなされる。だが同時に、必要に応じて連携する」とコメント。さらに「ようやく乗用車部門は、建機やトラクター事業を考慮せずに、独自の道を選択できるようになった」と述べた。
実際には、全利益の34%以上を占め、いわば“虎の子”であった重商用車・建機部門を切り離すことは、乗用車の舵取りがより重要性を増すことになるだろう。
しかし今回の分離で誕生する「ふたつのフィアット」はそれぞれ企業規模が小さくなるうえ、各部門の経営状況など以前から関係者に指摘されていた透明性もおのずと高まる。したがって、リスクを避けたい金融機関からの融資を、より仰ぎやすくなることは間違いない。
また将来的に、自動車業界の再編が行なわれるような事態になった場合も、両社は他社にとって魅力ある提携先となると思われる。
フィアットの企業規模は、2000年代初頭におけるフィアットの経営危機のとき、「吸収するには小さすぎ、吸収されるには大きすぎる」といわれ、他メーカーとの提携が思うように進まなかったからだ。
今回の分離・独立は、今後再編が進むであろう自動車業界で、どのような効果を示すか注目に値する。