【北京モーターショー10】TJイノーバのスーパープラットフォーム戦略

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TJイノーバ スーパープラットフォーム採用のコンパクトハッチ
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中国ローカルブランドで33%のシェア

北京モーターショーのTJイノーバのブースには、スポーツカーの『S11』に加えて2台のコンパクトな5ドア・ハッチバックが展示されていた。プレートには「超級平台」の中国語。直訳すれば「スーパープラットフォーム」の意味となる。

TJイノーバは中国最大の自動車エンジニアリング会社。2009年の新車販売台数のうち、中国ローカルブランド車に限れば32.4%が同社の設計であり、市場全体でも10%を占めるという。その地位をさらに強化しようと開発したのが「スーパープラットフォーム」だ。

クルマのホワイトボディを構成する部品のうち、スタイリングに関わる約20部品を除き、すべて標準化・モジュール化するのがスーパープラットフォーム。ホイールベースが2050mmのミニカーから3200mmのミニバン、あるいは14人乗りバンまで42種類のスーパープラットホームが用意されている。ブースに展示されていた2台は、同じスーパープラットフォームを使って違うスタイリングにできることを示すサンプルだ。

◆開発期間を半分に、コストは10分の1に圧縮

クライアントの自動車メーカーが商品企画に合わせてどのスーパープラットフォームを使うかを決めれば、大半の部品は標準化されているので、あとはスタイリングとそれに関わる20部品の設計を行えば(もちろんそれもTJイノーバに依頼可能)、ホワイトボディが完成する。これにより新車開発期間を「少なくとも2分の1にできる」という。

いささか古い例を言えば、かつて『カローラ』と『スプリンター』はボディの骨格を共有しながらスタイリングが違っていた。そういう効率的な差別化を、メーカーをまたいで展開してさらに効率化を追求しようというのがスーパープラットフォームである。

TJイノーバはプレス金型の工場も建設中で、標準化された部品の金型をここで作って自動車メーカーもしくはプレス部品メーカーに提供する計画。異なる自動車メーカーが同じ金型を共有したり、ひとつのプレス部品メーカーが複数の自動車メーカーに同じ部品を納入することで投資を抑制し、「ボディ開発のコストを従来の10分の1に削減できる」としている。

日本では考えられないビジネスモデルだが、TJイノーバは30社以上の自動車メーカーをクライアントにしているからこそ、これができる。同社の営業担当者によれば「スーパープラットフォームですでに10件のプロジェクトを受注した」とのことだ。

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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