「1.2リットルだと聞いたけど、ホント?」というのが、走り始めた第一印象だ。VW『ゴルフVI』の新たなベースグレードとなる「TSIトレンドライン」のエンジンは、オールニューの1.2リットルシングルチャージャー(ターボ)。
従来の自然吸気1.6リットルの後継として開発されただけあって、市街地のストップ&ゴーでも高速道路でも排気量の小ささを感じさせない。
いや、ひとつだけ……。信号停止からクリープで動き始めたところでジワッとアクセルを踏んだ瞬間は、過給が働かず、トルコンを使わないDSGはトルク増幅効果もない。この一瞬だけはトルクの細さを感じた。神経を集中していないと気づかない程度のものだけどね。
比較のために、1.4リットルシングルチャージャーを積む「TSIコンフォートライン」にも試乗してみた。同じコースを同じようなペースで走ったところ、「過給でトルクを出している」と感じるシーンが多かったのはやはり1.2リットルのトレンドライン。
過給を多用すれば燃費が悪くなる理屈だが、25kmほどのコースでコンフォートラインは13km/リットル、トレンドラインは14km/リットルと、排気量の差がしっかり燃費に現れた。一方、微低速領域以外で加速の体感差はほとんどなく、どちらが速いとも言いがたい。
トレンドラインは排気量が小さく、値段も安いけれど(コンフォートラインより21万円安い257万円)、足りないものは何もない。クリーンな外観と上質なインテリア、優れた乗り心地や静粛性といったゴルフVIの美点はもちろん標準装備である。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
千葉匠│デザインジャーナリスト
1954年東京生まれ。千葉大学で工業デザインを専攻。商用車メーカーのデザイナー、カーデザイン専門誌の編集部を経て88年からフリーのデザインジャーナリスト。COTY選考委員、Auto Color Award 審査委員長、東海大学非常勤講師、AJAJ理事。