【新聞ウォッチ】新春スペシャル版…「最悪は脱した」自動車業界だが

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気になるニュース・気になる内幕---朝刊(朝日、読売、毎日、産経、東京、日経の各紙・東京本社発行最終版)から注目の自動車関連記事をピックアップし、その内幕を分析するマスコミパトロール。

★「EV普及元年」、インド「デフレ車対決」、沈黙のトヨタとホンダ首脳

2010年最初の取引となる4日の東京証券取引所の「大発会」は日経平均株価が昨年来の高値水準を付けて、翌5日も続伸、まずは幸先よい幕開けとなった。自動車業界にとっては事実上の仕事始めとなる5日の自動車工業団体新春賀詞交歓会で日本自動車工業会の青木哲会長も「最悪は脱した」などと抱負を述べたが、残念ながら年末年始の各紙を読む限りではどうも本格回復に向けての力強さは感じられない。

その象徴は元旦の紙面構成。例年、各紙は、別刷りの新年特集を含めてボリュームたっぷりだが、総ページ数で読売,朝日、日経はかろうじて100ページを超えたものの、毎日が76ページ、産経が72ページ、東京が62ページにとどまった。

経費削減からホンダや日産自動車などの大手企業が軒並み広告出稿を自粛したためで、自動車業界では元旦から5日までに全面広告を掲載したのは「こども店長」のトヨタ自動車とCMキャラクターである香取慎吾がモデルの「初売りにエグゼよ」というダイハツ工業の2社だけだった。

“自粛”は広告ばかりでない。編集面でも自動車関連の話題が極端に少なかった。日経が元旦の準トップに「環境車の安全に日本案、国連採用、世界標準に」と掲載。東京は「電気自動車量産本格化へ、『普及元年』になるか」という内容の企画記事を取り上げたが、それ以外は、紙面で自動車メーカーの活字を探してもほとんど見当たらなかった。

さらに、3日以降の紙面でも、読売が4日付朝刊で「EVで暮らし革命」として、慶応大の清水浩教授への取材を中心に日本がエコカー開発で先行していることを紹介。日経は5付朝刊で「ホンダが低価格の現地車向けにインド製鋼板を初めて採用」と報じたが、1面トップの記事としてはパンチ力にやや欠けていた。

さすがに、きょう6日になると、2009年の国内新車販売台数が発表されたほか、インドではモーターショーが開幕したことで、各紙とも「新車販売31年ぶり500万台割れ」(東京)、「低価格車インド主戦場、トヨタとホンダ新型披露」(朝日)など自動車関連のニュースが目立つようになった。

そんな中、産経は「HV売れても薄利」というタイトルで、「今年の自動車業界は、エコカー特需の反動と値下げ合戦によるデフレに脅かされそうだ」と指摘、中でも「トヨタの“プリウス依存症”は深刻だ」と警鐘を鳴らす。きょうの朝日などが報じたが、車雑誌『NAVI』(ナビ。二玄社)が2月26日発売の4月号で休刊するという小さな記事も自動車関係者にとっては見逃せないニュースである。

また、新年恒例の経営者による「景気・株価見通し」(3日付日経)によると、自動車業界を代表してスズキの鈴木修会長兼社長は今年の景気を「海外経済の改善を背景に景気は持ち直すが、回復ベースは極めて緩やか」と答えている。株価では自動車業界からの経営者の回答はなかった。

一方、同様の経営者アンケートを3日付の読売も掲載しているが、ここでは、日産自動車の志賀俊之COOが登場。しかし、株価や為替相場については「無回答」だった。30人の経営者の中で「無回答」は志賀氏だけだが、「社長」の肩書きを持たない「COO」では無理もない。

その志賀氏は、今春、自工会の会長に就任する予定だが、その“予行練習”も兼ねてなのか、きょうの毎日には景気見通しについて「天気に例えるなら曇りのち薄日。エコカー補助金の延長などで消費に勢いが付けば回復の兆しも見える」とコメント。東京には「2010年キーワード」として「成長シナリオへの着手」、日経には「雇用や円高是正をしっかり。日本の強みを認識した政策も」などと、鳩山政権への注文と期待を語っている。

スズキの鈴木会長や三菱自動車の益子修社長とともに、志賀氏も顔の見える経営者の1人だが、昨年社長交代して話題を集めたトヨタとホンダの経営トップは相変わらず沈黙を守っており、新年早々から何となく不気味でもある。

《福田俊之》

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