ヤマハ発動機が発売した高級サロンクルーザー『EXULT 36 Sport Saloon』(イグザルト36スポーツサルーン)のセールスポイントのひとつに、「ボルボペンタ『IPS450』とベストマッチのヤマハ船型から生み出される抜群の走り性能」(同社)がある。
日本の量産モデルとしては初めて搭載される推進システムがIPS(インボート・パフォーマンス・システム)だ。従来の推進機とは方向転換の機構に違いがある。
通常の船だと船内に発動機を置き、船外のプロペラスクリューを回転させ前進し、プロペラ後方の舵の向きを変えて進路を変える。ボートなどに取り付けられる船外機は発動機とプロペラが一体化しており、舵ではなく方向転換は船外機全体の向きを変える。船内外機と呼ばれるレイアウトでは発動機を船内に置き、発動機とプロペラとの間にギアを挟んで、推進ユニットの向きを変えてボートの進路を変える。舵はない。
IPSは船内外機の発展と言えるアジマススラスト(方向推進機)の一種だ。同様に舵はなく、推進ユニットの向きを変えてボートの向きを変える。上下方向を軸に推進ユニットの向きを変える。
「IPS」はボルボペンタによる名称。ボルボペンタはボルボ(商用車)グループでマリンエンジンを手がけるスペシャリストだ。IPSの場合、二重反転プロペラを採用し、さらにそれがユニット前方に取り付けられているのが特徴となっている。
IPSはスピードや加速性に加え旋回性や燃費性にも優れ、従来の船外機や船内外機などと比べて燃費は15 - 30%の向上がみられるという。イグザルト36はこれを2基装備する。
「IPSと軽いステアリング・ジョイスティックなどの組み合わせによって、イグザルト36では、船を操縦するというよりも、ずっとクルマに近い感覚でドライビングを楽しむことができる」と同社。ここにも、初心者にもクルマを運転するように違和感なく船を操ることができるようにという同社の思いが込められている。