昨年10月、「刑務所に入れてもらう」ことを目的として、三重県津市内で面識の無い姉妹をクルマで故意にはねて重軽傷を負わせたとして、殺人未遂などの罪に問われた44歳の男に対する判決公判が11日、津地裁で開かれた。裁判所は懲役6年の実刑を命じた。
問題の事故は2008年10月11日夕方に発生している。津市久居明神町付近の市道で、路肩を歩いていた10歳と16歳の姉妹に対し、後方から進行してきた軽乗用車が衝突。そのまま逃走した。この事故で16歳の姉は全身強打の重傷を、10歳の妹が打撲などの軽傷を負った。
警察は後に自ら通報してきた男を殺人未遂や道路交通法違反(ひき逃げ)容疑で逮捕。後の調べで男は「生活費に困り、刑務所へ入れてもらうためにわざと事故を起こした」、「相手は誰でもよかった」などと供述。事故は通り魔的な犯行だったことが判明している。
これまでの公判で検察側は「被告は刑務所へ入れてもらうことを目的として、無差別に歩行者を狙った」として懲役7年を求刑。これに対して弁護側は「当時の被告には善悪の判断能力が欠けていた」として情状酌量を求めた。
11日に開かれた判決公判で、津地裁の山本哲一裁判長は「被告は両親と交際女性が家から出て行ったことで孤独を深め、生活費にも困窮したため、刑務所に入れてもらうことを考えるようになり、実際に犯行に及んだ」と指摘した。
その上で裁判長は「被害者2人が無防備であることを認識しながら、故意にクルマを突っ込ませた」と認定。「悪質かつ危険な犯行」としながらも、弁護側の主張を一部受け入れ、被告に対して懲役6年の実刑判決を言い渡している。