3社が投資計画を修正
新車需要の世界的な減退を受け、自動車メーカー各社の設備投資が今後、圧縮の動きとなりそうだ。一方で問題なのは、環境対応技術や新モデル開発向けの研究開発費の扱い。業績悪化で経営者は削減の誘惑に襲われることになろうが、どこまで踏ん張るかで将来の成長力も決まってくる。
乗用車8社の2008年度連結ベースの設備投資は、当初計画でざっと3兆2000億円だった。過去最高だった07年度を若干下回るものの、依然として最高水準の計画となっていた。
第2四半期終了時点で、修正を織り込んだのは500億円減額の4200億円とした日産自動車など3社にとどまっている。日産以外では、矢島工場(群馬県太田市)の能力増投資が効率化によって予定より少なく済んだという富士重工が80億円下方修正した。
◆トヨタも「相当減額」に
逆にマツダは50億円の増額修正としたが、これは昨年投入した新型『アテンザ』の関連設備を今年度に一括計上することにしたためだ。しかし、下期では業界全体として徐々に減額の動きが強まるのが必至となっている。
昨年度より5%少ない1兆4000億円を計画しているトヨタ自動車は、現時点では修正していないものの、能力増や新工場などの「新規プロジェクトを総点検して精査していく」(木下光男副社長)方針だ。
同社は、渡辺捷昭社長を委員長とする「緊急収益改善委員会」を発足させ、非常時体制に入っている。あらゆる費用の低減を検討しており、設備投資は「イメージとしては相当減額することになろう」(木下副社長)と見る。
◆日産の経営陣は「姿勢」を示すべき
もっとも、今年度9200億円を計画している研究開発費については「将来の当社の糧であり、目先だけ考えて減額することはない」(同)と強調した。09年には次期『プリウス』を含み、新型ハイブリッド4モデル投入するなど、環境対応技術や安全技術強化への投資は、積極的に推進する構えだ。
対照的に日産は設備投資とともに、研究開発費も400億円減額の4600億円に修正した。「1モデル当たりのエンジンの種類削減や、新モデル投入時期の見直し」(志賀俊之COO)などによって削減する方針という。
同社は自動車メーカーでは唯一、中間配当も前年同期に比べて減配を決めた。経営環境が急速に悪化してきて苦しいのは分かるが、将来への投資や株主還元に手をつけるなら、経営陣も報酬の減額など、とりあえず「姿勢」を示すべきだと思うのだが……。