【池原照雄の単眼複眼】ホンダの研究員はミシンも使う

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仮止め糸でガス流を制御

ホンダが運転席用にエアバッグの容量(膨らみ具合)を最適に制御する「i-SRSエアバッグシステム(連続容量変化タイプ)」を開発した。その構造は、バッグ本体に3本のポリエステル製仮止め糸を渦巻状に縫いこんでガスの流れを制御するというユニークなものだ。

開発部門である本田技術研究所の研究員はミシンを購入してもらい、試行錯誤の縫製を重ねながら最適の糸や縫い目のピッチを割り出したという。

◆二律背反を克服

新エアバッグは、「迅速」「持続」「低衝撃」がキーワードだ。迅速に開いて衝撃は少なく、かつ乗員への保護性能が持続するようにした。衝撃力は同社の従来の運転席エアバッグに比べ約3割低減している。ガスを噴き出すインフレーターの出力も3割程度低くした。

0.1秒未満の間に、すべての役目が終わるエアバッグで、迅速な展開と衝撃を和らげることは二律背反の関係にある。それを渦巻状の仮止めで克服した。

バッグを膨らませるガスは、まず中央部で迅速に膨らむ。その後、仮止め糸を剥離させながら、ガスは外周部へと広がり、膨らみを「持続」させる。持続性能では、新たに制御弁を取り付ける一方で排気口は2個から1個に減らし、一定の時間まで排気を止める機構も採用している。

◆独創力でコストをセーブ

コストについては明らかにしていないが、縫製工程や糸、制御弁などアップ要素はあるものの、現物を見る限り、そう大きくはないという印象だった。それを証明するように、新エアバッグは11月に発売する軽自動車の新型『ライフ』から搭載を始める。

軽自動車は比較的体格の小さい女性ドライバーの搭乗が多い。顔面がエアバッグにより近くなる「女性ドライバーに適したシステム」(上地幸一・本田技術研究所4輪開発センター主任研究員)という背景もある。

ホンダの新技術開発は、「独創性」とともに「普及しうるコスト」の達成に重きを置く。新エアバッグの渦巻き仮止めは、この2つの要素がうまく影響し合っている。独創力がコストの課題をセーブしたのだ。1987年に国産車初の運転席エアバッグを搭載して以来の蓄積も発揮されている。

《池原照雄》

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