昨年7月、山形県南陽市内の国道113号で、前走する軽乗用車へ故意に衝突するなどして4人を死傷させたとして、傷害致死などの罪に問われていた29歳の女に対する判決公判が10日、山形地裁で開かれた。裁判所は懲役12年の実刑を命じている。
問題の事故は2006年7月5日朝に発生している。南陽市竹原付近の国道113号を約120km/hで走行していた乗用車が、前走する軽乗用車に激突。クルマ約30m弾き飛ばされて道路脇の水田に転落し、乗っていた男女2人が死亡した。追突車を運転していた女は「軽乗用車に進路を妨害された」、「邪魔なのでぶつけてやった」などと、故意に追突したようなことをほのめかしていた。
10日に行われた判決公判で、山形地裁の金子武志裁判長は「死傷した被害者には何らの落ち度はなく、被告自身のヒステリーに根差した自己中心的で身勝手な犯行である」と指摘した。弁護側は犯行時の心神耗弱状態を主張していたが、これについても裁判長は「夫から離婚話を切りだされたこと」、「被告の父親による暴力」が動機だったと指摘。「被告はこうした動機によって自暴自棄となり、犯行当時は極度の興奮状態にあったと考えられるが、事故当時の記憶が清明なことなどから心神耗弱状態にあったとは言えない」と、これを退けた。
また、裁判長は「被告人の蛮行で死亡した被害者の肉体的、精神的苦痛は甚大。無念さは察するに余りある。無謀な運転で2人の生命を一瞬にして奪った被告人には最大級の非難が妥当である」としながらも、実家の家庭環境に問題があり、犯行動機の形成に一定の寄与をしている点を考慮。この部分に情状を酌量する余地はあるとして、懲役12年の実刑判決を言い渡した。