イタリア生産事業省と保険事業監視協会は8日、一般モニターを使ったドライブレコーダー実験を来年1月から開始すると発表した。
実施されるのは、トリノ、ミラノ、ローマ、ナポリ、パレルモ。いずれも事故・車両盗難が多いため、保険料がイタリア中でも高いことで知られている都市だ。無作為に抽出した1万7000人のドライバーが対象となる。
ただレコーダーは、日本でタクシーに普及しつつあるモニターカメラ方式ではなく、加速度や走行軌跡をデータとして記録するシステムが採用される。GPSも併用されており、盗難の際の追跡も容易という。機器の製造は入札によって、伊レッジョ・エミリアに本社を置く自動車用防犯機器メーカー、メタシステム社が担当することになっている。
実はこのドライブレコーダー研究には、早くも2001年に700万ユーロの予算が計上されている。そこまで真剣に検討する背景には、高額な保険料がある。イタリアで自動車保険は1996年から130%も値上がりし、現在ではヨーロッパ一高い。また、事故・盗難率が低い地方都市といずれも高い大都市では、1.4倍以上の格差がある。
ドライブレコーダーは事件処理を迅速にし、ドライバーの安全運転への自覚を促す。そのため、システムが実用化された場合、保険事業監視協会は、装着車両の保険料は10%以上安くできるとしている。
レコーダー導入で当初心配されたのは、個人情報保護の問題だった。ヨーロッパでは、プライバシー重視の観点から、カーナビでさえ走行軌跡が記録されない。しかしイタリア人ドライバーの多くは、「保険料が安くなるほうが、プライバシーよりも先」と割り切りを見せている。
実は、イタリアでドライブレコーダーに力を入れているのには、もうひとつの理由がある。事故に見せかけた自動車保険金詐欺の多発だ。これも、高い事故・盗難率とともに保険料を引き上げている元凶なのである。