二次被害回避の責任を問うのは無理…高裁判断

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2001年3月、福岡県宮田町内の九州自動車道で当て逃げ事故に遭い、立ち往生していたクルマの存在に気づかずに突っ込み、親子2人に後遺障害の残る重傷を負わせたとして業務上過失傷害罪に問われた36歳の女性に対する控訴審判決公判が2日、福岡高裁で開かれた。裁判所は一審の無罪判決を支持。検察側の控訴を棄却している。

問題の事故は2001年3月15日の午後9時ごろに発生している。宮田町芹田付近の九州自動車道下り線で当て逃げ事故の被害に遭ってスピンし、本線上で立ち往生していた当時27歳の男性が運転する乗用車に後続のクルマが衝突。車外に出て被害を確認していた男性とその母親が次々にはねられた。2人は共に脳挫傷の重傷となり、現在も介護が必要な後遺障害が残った。

最初に事故を起こした男は後に逮捕され、酒気帯び運転の発覚を恐れて逃走したことが判明。一審の福に岡地裁は「最終的な被害は二度目に事故を起こした女性の過失が大きい」と判断し、最初に事故を起こした男執行猶予付きの有罪判決を命じていた。これを不服とした検察側が控訴し、二審の福岡高裁では実刑判決に変わり、最高裁で実刑が確定している。

しかし、一審が「女性の過失が大きい」と判断したことで、当初は不起訴となっていた女性についても地検の再捜査が行われ、2004年に在宅で起訴されていた。

2日に開かれた控訴審判決公判で、福岡高裁の虎井寧夫裁判長は「女性のクルマが法定速度を遵守していたとしても、事故の予見や回避可能性があったとはいえない」と指摘。検察側の「衝突を回避したクルマもあり、衝突地点の76m手前に至った段階で立ち往生したクルマの確認ができていた」という主張については「黒っぽいものが見えた…という程度であり、他車と女性のクルマの条件が一致する証明がなく、事故後の実況見分と実際の運転状況には差異がある」としてこれを否定した。

その上で「街灯のない暗い現場で立ち往生した事故車両に気づき、避けるのは不可能。高速道路上で前照灯をハイビームにしたり、制限速度以下に減速する注意義務まで課すことはできない」と女性の過失を否定するとともに、一審の無罪判決を支持。検察の控訴を棄却した。

《石田真一》

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