駐車場から出ようとしていたクルマを誘導していた男性が酒気帯び運転のクルマにはねられて意識不明の重傷を負った事故で、業務上過失傷害や道路交通法違反の罪に問われた33歳の男に対する控訴審判決公判が14日、東京高裁で開かれた。
裁判所は懲役1年8カ月を命じた一審の千葉地裁判決を破棄。改めて懲役2年4カ月の実刑を命じている。
問題の事故は2001年10月4日に発生している。成田市飯田町付近の国道464号線で、飲食店の駐車場からバックで出ようとするクルマを誘導するため、車道に立っていた37歳(当時)の男性が、国道を走行してきた乗用車にはねられた。
クルマは路上駐車の車両を避けようと対向車線側に侵入した際に男性と衝突。事故当時の速度が比較的速かったため、男性は十数メートル弾き飛ばされ、意識不明の重体となった。事故から4年以上が経過するが、男性は今も意識が回復せず、入院を続けている。
事件捜査を担当した千葉県警・成田署は「運転者の飲酒運転が事故の原因」と結論づけて業務上過失傷害で男を書類送検した。
しかし、警察が実施した検分調書に記された事故発生位置やクルマの挙動が千葉地検が聴取した目撃者の証言などと大きく乖離していることがその後に判明。地検が警察に対して2度の実況検分やり直しを指示するなど、異例の展開となっていた。
クルマを運転していた男は事故から1年10カ月後の2003年8月に在宅のまま起訴された。
一審の千葉地裁では事故から約1年5カ月後に行われた2度目の検分結果を「事故発生から時間が経過しており、信用するに値しない」として不採用。事故当初の検分調書にあった「衝突時の速度は約40km/h」を採用した。
いっぽう、事故が飲酒運転原因で発生していることや、被害者に特段の過失が生じていないことは認め、被告に対して懲役1年8カ月の実刑判決を命じた。
だが、これに対して検察側は再度実施した検分調書が採用されず、衝突時の速度が低く見積もられたことなどを不服として東京高裁に控訴。被告側も量刑不服で同様に控訴していた。
14日に開かれた控訴審判決公判で、東京高裁の植村立郎裁判長は「被告の運転していた乗用車の速度を低く認定し、飲酒運転の常習性考慮も不十分だった」と指摘。一審の千葉地裁が否定した目撃証言を証拠として採用し、被告が運転するクルマと被害者の衝突速度を約45km/hと認定した。
その上で、「被告の運転は無謀とまでは言えないものの、センターラインを逸脱した上、制限速度を上回る危険性の高い運転を行った」と指摘。週一度のペースで飲酒運転を恒常的に行っていたことも認定した。
さらに「一審では被害者の落ち度が過大に評価されたが、駐車車両を誘導する目的で車道に立っていた被害者の落ち度は大きくない。これらを勘案すれば一審で被告に言い渡された量刑は低かった」として、一審の千葉地裁判決を破棄。被告に対して懲役2年4カ月の実刑判決を改めて言い渡した。