2003年10月、静岡県掛川市内の東名高速道路で、立ち往生した普通トラックに、後続のワゴン車が追突、10人が死傷した事故について、検察庁・静岡地検浜松支部は22日、トラックを運転していてた29歳の男を業務上過失致死傷罪で在宅起訴した。
事故発生から1年以上経過してから起訴が行われるという、あまり例の無いものとなっている。
問題の事故は2003年10月19日未明に発生している。同日の午前4時25分ごろ、掛川市上張付近の東名高速道路下り線で、27歳(当時)の男が運転する普通トラックが道路左側のガードレールに接触。その反動で中央分離帯にも接触し、追越車線上で停止した。
男はトラックにハザードランプを灯し、非常電話を使って事故の発生を連絡していたが、約15分後の午前4時40分ごろ、追越車線側を減速しないまま走ってきたワゴン車がトラックに激突。前方へ回転するようにしながら飛んでいった。
このワゴン車には10人が乗っていたが、このうち3人は車外放出されて即死。2人は現場での救出作業中に死亡した。残る5人が病院に収容されたが、病院でさらに2人が死亡。合計の死亡者は6人となった。
生存者の証言から、ワゴン車を運転していた男性(当時26歳、事故で即死)は、事故の直前までトラックが本線上で停止していることには気がついていなかったことも判明している。
検察では2004年1月に自損事故を起こした容疑でトラックを運転していた男を書類送検したが、10人が死傷した事故についても「後続車が衝突する可能性は容易に予想できた」として、責任がどのように及ぶかを検討していた。
その結果、後続車のドライバーにも前方不注意の責任は生じていたが、トラックを運転していた男が通報を優先することで、発炎筒を焚いて後続車に立ち往生していることを知らせるなどの措置を怠っていたことを重視。
この部分に重大な過失があったと判断し、男を業務上過失致死傷罪で在宅のまま起訴した。後続車の運転者も同罪が問われたが、被疑者死亡によって不起訴となっている。
事故発生から1年以上経過した段階での起訴は異例だが、今回の事故では同一のクルマに乗車していた7人が一度に死亡するという、まれなケースであり、その結果が悲惨だったことからも斟酌されたようだ。