バス車内での義足調整、わいせつ行為とは認めず

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路線バスの車内で義足の位置を直していたものの、乗り合わせていた女子高校生数人からわいせつ行為を行ったと通報されて、公然わいせつ罪で逮捕・起訴された44歳の男性に対する判決公判が1月31日、福岡地裁で行われた。

裁判長は「目撃者の誤認」として、男性に対して無罪を言い渡している。

問題の事件は2004年3月1日に発生している。同日の午後0時30分ごろ、福岡市中央区から同市博多区に向けて走行していた路線バスの運転手に対し、乗客の女子高校生が「後ろの方に乗っている中年のおじさんがスボンを下げ、下半身を見せている」と告げた。

バスの運転手はわいせつ事件だと判断して警察に通報。終点のJR博多駅に到着した段階で男性の身柄を駆けつけた警察官に引き渡した。警察官は男性に任意同行を求め、直後に公然わいせつの現行犯で逮捕した。

だが、逮捕された男性は警察の取り調べに対し、「左足に装着していた義足がずれ、足が痛くなったたから車内で調整しようとしていた。義足を直すにはズボンを下げる必要がある」と主張。

「義足を直しているときにはコートで隠しており、乗客の目には触れないようにしている。わいせつ行為を行うという意図もない」と容疑を全面的に否定した。

警察では並行して目撃者の女子高校生数人から事情を聞いていたが、全員が口を揃えて「あれはわいせつ行為だった。見せつけていた」と証言。検察ではこの証言を全面的に採用して、男性を公然わいせつ罪で起訴している。

1月31日に行われた判決公判で、福岡地裁の谷敏行裁判長は、起訴理由となった女子高校生の証言について「目撃者は被告の男性が何をしていたのかを正確に認識しておらず、推測のみでわいせつ行為と誤認した可能性が高い。中年男性がわいせつな行為を行うという予断あるいは偏見が目撃証言に影響した可能性は否めない」と指摘した。

その上で「義足を調整することは被告にとって必要不可欠で、そのために下半身を露出することはあったが、常に他人の目に入らないように気を使っていた。わいせつ行為が行われていたとは認定できず、公然性の有無を判断するまでもない」として、懲役6カ月の求刑を退け、被告に無罪を言い渡している。

《石田真一》

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