沖縄県獣医師会は26日、沖縄本島北部に棲息する国の天然記念物「ヤンバルクイナ」がクルマにひかれるという事故が相次ぎ、今月だけでも4羽が死亡していることを明らかにした。このままのペースが続くと2010年に絶滅してしまう可能性があるという。
これは沖縄県獣医師会が明らかにしたもの。同会によると、5月から6月に掛けての間はヤンバルクイナの繁殖期にあたり、普段のテリトリーを越えて行動する時期にあたるという。
ヤンバルクイナは飛ぶことができないために地上を歩いて移動するが、夜行性であることが祟り、山間部を夜間に走り抜けるクルマにひかれるという事故が今月に入ってから多発している。
今月5日から24日までの間、ヤンバルクイナの生息域がある国頭村、東村でクルマにはねられたヤンバルクイナ5羽を発見。うち4羽は死亡しており、1羽については治療を行っている。この1羽についても左翼の付け根と脊椎を損傷しており、両脚も動かないなどかなり重篤な状態にある。
ヤンバルクイナがクルマにはねられるという事故は、過去5年間に17件発生している。このうちの70%が繁殖シーズンに集中しているが、今年の「20日間で5羽」というのは過去最悪のペース。全体の生息数が1000羽を割り込んでいるのではないかという予測もあり、このままのペースで輪禍が続けば2010年までにヤンバルクイナは絶滅する可能性が高い。
数年前までは夜間の交通量が少なく、輪禍によるヤンバルクイナの死亡はあまり確認されていなかった。むしろ、マングースや野良ネコなど、鳥を捕食する小動物による被害の方が多かった。
ところがここ数年で輪禍による被害が増えたのは、いわゆる「走り屋」が夜間に山間部の道を暴走するようになったからと指摘する声も多い。一般車よりも速いスピードで走るため、路上を歩くヤンバルクイナを発見することができない(あるいはそれ自体に関心がない)ことが主因とみられる。
天然記念物であるため、死に至らしめた場合には罰金や懲役などの刑罰に処せられる可能性もあるが、こうした罰則が仇となり、ヤンバルクイナに被害を与えると放置して逃げ去ってしまうことも多い。
同会では国や県に対し、暴走を防ぐための凹凸舗装や、マングース北進を避けるためのフェンス設置を求めているが、絶滅するという危機感があまり伝わっていないという現状もある。