当時17歳の少年をクルマではねて死亡させた交通事故加害者の男が、少年の遺族(両親)を逆恨みしてインターネットの掲示板で誹謗中傷を繰り返し、名誉毀損の罪に問われた29歳の男に対する控訴審判決公判が22日、大阪高裁で開かれた。裁判所は被告の請求を棄却。一審の大阪地裁判決を支持した。
一連の事件の発端となった事故は2000年4月21日深夜に発生している。大阪府泉佐野市内の市道を走っていた当時25歳の男(被告)の運転するクルマがカーブを逸脱、対向車線側のガソリンスタンド横に止まっていた17歳少年が運転する原付バイクに激突した。
この事故によって少年は事故の2日後に死亡。警察では男の著しい速度超過が事故の原因と判断し、業務上過失致死と道路交通法違反(速度超過)容疑などで逮捕していた。
男は2001年7月に業務上過失致死と道路交通法違反事件の論告で懲役2年を求刑されたが、その直後にインターネット上の掲示板に被害者遺族の実名を挙げ、「うそでうそを塗り固める」など、遺族側が行った警察への証言を非難したと受け取れる書き込みを匿名でしていた。
事故で死亡した少年の友人がこの書き込みを発見し、遺族を通して警察に通報。被告本人が書き込みを行ったものと最終的に確認された。
一審の大阪地裁では「被告は交通事故の裁判で被害者側が自己に不利な証言を行っために長期の刑が求刑されたと思い込み、事故を起こした自分の行為を反省することなく、他者に責任を転嫁するばかりか、身勝手な中傷を行って遺族の社会的信用を低下させたことは明白」と指摘。
男に対して懲役1年4カ月の実刑判決を言い渡し、これを不服とする被告側が控訴していた。
22日の控訴審判決公判で、大阪高裁の那須彰裁判長は「被告の一方的な責任で起こした事故にも関わらず、息子を無くした両親の心情を誹謗中傷で逆なでした。その精神的被害は大きい」と認定。一審の大阪地裁判決を支持し、被告の請求を棄却した。