昨年10月、広島県広島市内で自分の運転するクルマの前をアメリカ兵が横切ったことに腹を立て、車内から拳銃を発射して21歳の三等兵曹に重傷を負わせたことで殺人未遂罪に問われた37歳の男に対する判決公判が19日、広島地裁で行われた。
裁判所は被告に対して懲役10年の実刑判決を言い渡している。
問題の事件は昨年10月26日の午前4時ごろに発生している。広島市中区流川町付近の市道を在日米軍岩国基地に所属するアメリカ兵3人が歩いていたところ、クルマで通りがかった男が拳銃1発をいきなり発砲。弾は21歳の三等兵曹に命中した。
拳銃を撃った男は事件後に現場から逃走したため、警察では殺人未遂事件として捜査を開始。翌日の夜になって広島県警・広島東署に出頭してきた37歳の男を逮捕している。
男は警察の取り調べに対して、「自分のクルマの前を横切るなどして、走行を妨害したことに腹立たしさを感じた。怒鳴っても移動しようとしないので撃った」などと供述。当初は交通トラブルが事件の発端になったとみられていたが、後に尿から覚せい剤の成分を検出。薬物中毒による可能性が高まっていた。
19日に行われた判決公判で、広島地裁の田邉直樹裁判長は「犯行は偶発的な要因に行われたと考えられるが、弾道がそれていれば被害を受けたアメリカ兵は死亡した可能性が大きかった」と認定した。
その上で「被告は“万が一に備えて銃を持ち歩いていた”と証言しており、万が一の場合には場合には拳銃を撃ち、相手を死亡させても構わないという未必の殺意があった。人通りの多い繁華街で発砲したことや、拳銃の入手ルートについては証言を拒むなど、刑事的な責任は重大である」として、男に対して懲役10年の実刑判決を言い渡した。