クルマに当たったように見せかけ、運転者に対して「示談しよう」と持ちかけ、現金3000円を騙し取っていたとして、詐欺罪に問われた59歳の男に対する初公判が14日、大津地裁で開かれた。被告は起訴事実を全面的に認めている。
問題の事件は今年2月に起きている。2月5日午前、草津市大路1丁目付近の市道を歩いていた59歳の男が、横を通りがかった34歳男性の運転するクルマと接触したと警察に届け出た。
通報を受けた滋賀県警・草津署員が現場で双方から事情聴取を行い、クルマを運転していた男性が「病院に送り届けて治療を受けさせる」としたため、「後は双方で話し合うように」と告げて現場を離れた。
翌日6日、草津市内にある病院から「交通事故に遭ったとして来院した男だが、昨日も別の人が同じ理由で連れてきている。外傷も確認できないし、詐欺ではないのか」と警察に通報があった。
通報を受けた警察官が病院を訪れると、前日に軽微な事故を起こした際の被害者として事情を聞いた男がおり、改めて事情を聞いたところ、いわゆる当たり屋行為であることを認めたため、詐欺容疑で逮捕した。
調べに対し、男は「5日に事故を起こしたときには、相手方に3000円を請求し、これを受け取っており、6日は請求する直前に捕まってしまった。まさか同じ警官、同じ病院に当たるとは考えもしなかった」と自供していた。
14日に行われた初公判で、被告の男は3000円を騙し取ったことなど、起訴事実を全面的に認めている。
当たり屋行為を行ったのは、別の罪で服役していたとき、同じ房で服役していた当たり屋常習者から「あれは儲かる」と聞いたためで、この際に「本当に負傷しないようにクルマが低速で走る商店街の細い道でやれ」、「多額の現金を請求しても支払えるわけがない。2-3万円程度に留めておけ」などと、具体的な方法のレクチャーも受けていたという。
しかし、この男のレクチャーには「警察に通報することを嫌がるドライバーが多い。そういうのをターゲットにしろ」というのも含まれていたが、男の場合は最初の犯行時に通報されてしまっており、ここで警官に顔を覚えられてしまったことが逮捕へのきっかけとなっている。
検察は「反省がみられない」とし、裁判所に対して懲役3年を求刑している。