「押した」と検察、「止めた」と弁護側

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自らに掛けた保険金で借金の穴埋めをすることを目的に自殺を決意した実父を車道に突き飛ばし、交通事故死させることを手助けしたとして、自殺幇助罪に問われた39歳の男に対する公判で、弁護側が行う最終弁論が24日、京都地裁で開かれた。弁護側は「自殺を幇助していない」と罪状を否認している。

問題の事故は昨年3月9日の午前1時ごろ発生している。京都市下京区五条通新千本東入付近の国道9号線に当時68歳の男性が飛び出し、走ってきた乗用車にはねられて死亡した。

事故が発生した当時は通常の交通事故として扱われたが、男性をはねたクルマのドライバーは「男性が横から飛んできた」と供述。さらには対向車線で事故の瞬間を目撃したドライバーが「被害者の男性は何者かに強く突き飛ばされ、車道に転倒したように見えた」と供述した。

事故発生を通報したのは男性の長男にあたる人物だったが、この長男の証言とは明らかな食い違いが生じていることからさらに調べを進めたところ、死亡した男性には多額の保険金が掛けられていることが判明した。

男性は自らの借金をこの保険金で穴埋めすることを周囲に提案しており、長男は男性の自殺を幇助した(車道に向けて押し出した)疑いが濃くなった。このため、警察では長男を自殺幇助容疑で送検。検察も同罪で起訴していた。

24日に行われた最終弁論で、弁護側は「被告は実父を突き飛ばしたのではなく、車道に飛び出そうとしていたのを止めていた。それが走行中の対向車からは突き飛ばす動作に過ぎない」と指摘。目撃証言には信憑性が無いことを強調し、改めて無罪を主張した。

加えて「被告は自殺を決断した父親に対し、自殺を止めるように諭していた。状況証拠だけで自殺幇助とされるのは納得できない」とも主張している。

検察側は「父親の命と引き換えに保険金を得ようとした言語道断の犯行」と論告求刑公判で指摘。裁判所に対して懲役5年の実刑判決を求めている。

判決は5月26日に言い渡される予定だ。

《石田真一》

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