被害者救助より、証拠隠滅を優先した男に実刑判決

自動車 社会 社会

昨年11月、鹿児島県名瀬市で飲酒運転の末にひき逃げ事故を起こし、当時24歳の男性を死亡させたとして、業務上過失致死と道路交通法違反(酒気帯び運転、ひき逃げ)の罪に問われた20歳(事故当時は少年)の男に対する判決公判が10日、鹿児島地裁名瀬支部で行われた。

裁判所は男に対し、懲役3年の実刑判決を命じている。

この事故は昨年11月16日の未明に発生している。名瀬市内の交差点を歩いて横断しようとしていた当時24歳の男性がスピードを落とさずに交差点へ進入してきたクルマにはねられた。

男性はすぐに病院へ収容されたが、頭を強く打っており、事故から1週間後の11月23日に急性硬膜下血腫が原因で死亡している。

クルマは事故現場からそのまま逃走したが、事故発生からおよそ4時間30分後に当時19歳の少年が警察に出頭してきた。少年は事故直前まで大量の飲酒(缶ビールを約10本、焼酎をコップ4杯)を行ったことで泥酔状態だったが、帰宅のためにクルマを運転。前方不注意状態のまま男性をはねたことを自供した。

男は事故直後に現場近くの寺社にクルマを隠し、徒歩で逃げようとしたが「途中で電話を掛けた友人などから説得されて出頭した」とも供述している。

しかし、出頭時にはアルコールがほとんど抜けており、酒気帯び相当量である呼気1リットルあたり0.15ミリグラムのアルコールしか検出されず、道路交通法違反容疑については、酒気帯び認定するのが精一杯だった。

10日に行われた判決公判で、鹿児島地裁名瀬支部の河村浩裁判官は「被告は被害者の救助を行うことよりも、事故を起こしたクルマを隠蔽することを優先した。これは極めて悪質と言わざるを得ない」と指摘した。

さらに「突然命を奪われた被害者の無念さはもちろんだが、家族を失うことになった遺族も厳しい判決を望んでいる。遺族の悲しみ、怒りは大きく、それを考慮したなら厳しい判決は免れられない」として、懲役4年の求刑に対し、懲役3年の実刑判決を言い渡した。

今回の公判で遺族側は危険運転罪の適用を求める意見陳述を行っている。結果として危険運転罪の適用は見送られたものの、厳しい判決を望むという部分は判決に取り入れられた。

《石田真一》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース