虚偽の供述? 元警官に遺族が賠償請求

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和歌山県和歌山市に住む男性の遺族が、事故を起こした女性警察官(現在は退職)に対し、総額2億円あまりの損害賠償を求めた民事訴訟の第1回口頭弁論が和歌山地裁で開かれた。

警察官が非番中に起こした事故について、警察が事実確認を徹底させないまま事故捜査を行ったことが原因で実際とは違う衝突地点が検分調書に記載され、それに伴って過失割合の上では加害者扱いにされてしまった、というもの。女性側は裁判署に慰謝料請求の棄却を求めている。

訴えによると、この事故は2001年2月19日に発生している。同日の午後2時50分ごろ、和歌山市鳴神付近の市道を原付バイクで走行していた当時46歳の男性が、当時21歳の女性が運転する軽ワゴン車と出会い頭に正面衝突した。男性はすぐに病院へ運ばれたが事故発生から約33時間後に脳挫傷が原因で死亡している。

後の調べで、事故を起こしたのは和歌山県警・和歌山北署に勤務する女性警官とわかった。事故処理を担当した和歌山東署の交通捜査課では、この女性や目撃者の証言から、現場付近の交差点で対向車線側に割り込んだバイクが軽ワゴン車に衝突した…という内容で実況検分調書を作成。最終的にはバイク側の過失がより重いと判断した。

女性側の契約する保険会社は、警察の判断から男性を加害者として扱い、男性側の過失割合を「7」、女性側を「3」とした。このため、男性側に支払われる保険金は大幅に減額されてしまった。

これに不信感を感じた遺族は独自の調査を開始。その結果、衝突地点は交差点ではなく、その手前の直線道路であること、事故発生に至る経緯は「路上駐車のクルマを避けるため、漫然と対向車線に飛び出してきた軽ワゴン車が、通過しようとしていたバイクと衝突した」という疑いが濃厚となった。

また、警察が重要視した目撃証言についても、この目撃者がいたのは衝突現場から20mほど離れた地点であり、携帯電話で話していた際に激突音に気づいて初めて現場の方向に視線を向けるなど、事故の瞬間を目撃したわけではないことがわかった。

こうした事実から、遺族側は「一方の当事者が死亡したこともあり、生存したもう一方の当事者の証言が大きくクローズアップされた結果、事実とは異なる杜撰な調書が作成されてしまった」とした。

そして「さらにはその生存者が警察官だったこともあり、捜査を担当した警察官も、生存した当事者が“自分に有利な証言をした”とは疑っておらず、目撃証言とは違う場所が最終的には衝突地点と認定されてしまった」とし、虚偽の証言を行った女性に対し、総額2億円あまりの損害賠償を求めることとなった。

8日に和歌山地裁で開かれた第1回口頭弁論で、遺族側は「衝突地点の相違」、「目撃証言の曖昧さ」を改めて指摘した。これに対して女性側は賠償請求の棄却を求めるに留め、証拠については後日提出するとした。

《石田真一》

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