バラで判断するか、まとめて判断するか---本当に悪いのは誰だ

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東京地検八王子支部は18日、2002年10月に東京都福生市内で起きた交通事故について、これまで事故の主原因とされてきた29歳の男性を不起訴にするとともに、全ての事故の発端となった24歳の男を業務上過失致死傷罪で在宅起訴した。

東京地検八王子支部によると、問題の事故は2002年10月27日に発生している。同日の午後11時20分ごろ、福生市内の国道16号線で、前を走る乗用車に後続のクルマが追突するという事故が発生した。

追突された側のクルマは対向車線に押し出され、別のクルマと正面衝突。追突してきた側も回避しようとした際に対向車線側へ逸脱し、別のクルマと接触している。

この事故では最初に追突されたクルマの助手席に乗っていた当時28歳の女性が死亡。その直後に起きた正面衝突事故によって双方の運転者を含む4人が重軽傷を負った。また、追突してきたクルマも対向車線側で接触事故を起こした際、乗員1人に軽傷を負わせている。

警察では当初、追突事故が発端になったとはいえ、対向車線に飛び出して正面衝突事故を起こした責任は大きいとして、このクルマを運転していた男性を業務上過失致死傷容疑で書類送検していた。

もちろん最初に事故を起こしたドライバーも送検されているが、接触事故の責任のみが問われ、事故責任の割合は小さいという逆転現象が生じていた。

しかし、検察はこれに疑問を持ち、双方から改めて事情を聞いたところ、最初に追突したドライバーが他のクルマの挙動に気を取られ、前方をほとんど見ていない状況で追突事故を起こしていたことがわかった。追突時の速度も速く、このために追突された側のクルマを対向車線に押し出すひとつの要因になった。

そして、追突された側のドライバーは「追突された」という現状を把握できないまま対向車線に押し出され、回避時間がほとんど無いといった状況で正面衝突事故を起こしていたことも明らかになった。

これらの理由から、検察では「事故の原因は最初に追突事故を起こした男にある。正面衝突事故もこの男の過失で発生している」と判断。この男を業務上過失致死傷罪で在宅起訴するとともに、正面衝突事故を起こした男性については「事故の発生は不可抗力であり、責任を問うのは酷である」として不起訴処分にしている。

警察は「連続して発生した事故を分割」し、それぞれに過失責任を設定したが、検察は「全ての事故を一まとめ」にして過失責任を設定している。これは捜査方法の違いでもあるが、今回のようなケースでは検察の取った方法が一般には受け入れられやすいだろう。

《石田真一》

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