検察は被害者から聴取する義務はない---?

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クルマにはねられ、障害で寝たきり状態となった少年の両親が、被害者側の意見を聞かずに加害者の処分を決定した検察の対応を不服とし、国に対して500万円の損害賠償を求めた訴訟について大阪地裁堺支部は6日、原告の訴えを棄却した。

「検察官が被害者から意見を聴取する義務が法律で定めらていない」というのがその理由だという。

問題の事故は1999年9月、大阪府和泉市内で発生している。自宅近くの市道を横断しようとしていた当時10歳の少年がクルマにはねられ、脳などに重い障害を負った。

クルマを運転していた女は業務上過失傷害容疑で警察に逮捕されたが、警察と検察の取り調べの際には「子供が突然飛び出してきた」と主張。目撃者もこれに同調する証言を行ったため、検察は被害者側からの聴取を行わないまま、「被害者にも一定の責任はある」と判断。女に対して罰金40万円の略式命令を行った。

この決定に少年の両親が激怒。「被害者側の主張を聞くことも無く、相手に重い障害を負わせながら不当に軽い処分を勝手に決定したプロセスには問題があり、被害者やその家族への配慮を定めた犯罪被害者保護法を無視するものだ」として、2002年10月に国を相手に500万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。

また、これと並行して行われた加害者へ賠償を求めた民事訴訟では過失割合が加害者8:被害者2と認定され、介護費を含めた1億6000万円の支払いを命じる判決が出されている。

しかし、大阪地裁堺支部は6日までに「現行法令を基準とするかぎり、検察官が被害者から意見を聴取しなくてはならないと義務付けられておらず、被害者側から事情を聞かずに処分を決定しても違法性は生じない」と判断。原告の訴えを棄却した。

交通事故では被害者が“死人に口なし”として扱われ、生存した加害者に有利な証拠が採用されるという問題がしばしば生じているが、今回の判断は現行法令に沿ったものとはいえ、被害者を擁護するという時代の要求とは程遠いものとなってしまった。

《石田真一》

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