乗客36人を乗せた路線高速バスを泥酔状態で運転していたとして、道路交通法違反(酒酔い運転)の罪に問われたジェイアールバス関東・宇都宮支店の32歳運転手に対する判決公判が16日、静岡地裁浜松支部で開かれた。
裁判所は「前代未聞の危険極まりない行為」として懲役2年の実刑判決を命じている。
事件は今年8月18日に起きた。ジェイアールバス関東の東京発大阪行き路線高速バス「東海道昼特急1号」が神奈川県内の東名高速下り線を走行中に他車と衝突。その後も蛇行運転を繰り返し、他のドライバーから「JRの大型バスが走行車線をフラフラしながら走っている。様子があまりにもおかしい」と通報が相次いだ。
静岡県警・高速隊のパトカーは袋井市内で蛇行運転を繰り返すバスを発見。三ケ日町内の浜名湖サービスエリアに誘導し、運転手のアルコール検知を実施したところ、呼気1リットルあたり0.85ミリグラムのアルコールを検出。道交法違反(酒酔い運転)の現行犯で逮捕した。
その後の調べで、この運転手が前夜から酒を飲み続け、二日酔いの症状を緩和させる目的で運転中に焼酎のお茶割りなどを飲む、いわゆる「迎え酒」を行っていたことが発覚。アルコールに酩酊し、正常に運転ができない状態で乗務を続けていたことが判明している。
16日に行われた判決公判で、静岡地裁浜松支部の志田洋裁判官は「飲料水のペットボトルの中身を入れ替えて飲酒を行うなどの行為は悪質で、職業運転手でありながら乗客を危険な目に遭わせた責任は重い」と指摘した。
その上で「酒酔い運転の影響により、乗客のみならず、他の通行車両にも危険や恐怖感を抱かせた今回の犯行は言語道断でその刑事責任は重い。被告が反省していることは認められるが、情状を酌量し、刑の執行を猶予するのは妥当とは言えない」と述べ、懲役3年の求刑に対し、懲役2年の実刑判決を言い渡した。
死傷者ゼロにも関わらず、執行猶予が認められないというのは、職業運転手による泥酔運転を裁判所が「悪質」と評価したためとみられる。