業務中に肺梗塞の症状を起して死亡した当時57歳のタクシー運転手に対し、大阪労働局は7日、この運転手を労働災害(労災)として認定していたことを明らかにした。同じ姿勢で長時間座り続けたことからロングフライト血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)を起し、これが肺梗塞につながったと判断されたようだ。
大阪労働局が行った労災認定によると、この運転手は2000年7月6日の午前0時ごろ、会社から無線で配車連絡の指示を受け、大阪市淀川区内の飲食店に出向いた際、客を呼びに行ってビルの階段を下りている際に姿勢を崩して転倒。そのまま意識を失った。運転手は病院に搬送されたが、3日後に肺梗塞が原因で死亡している。
遺族は同年末までに労災を申請。これを受けて労働局が運転手の勤務実態を調査をしたところ、この運転手は事故直前までのおよそ7時間20分、休憩を全く取らずにずっと運転席に座っていたことがわかった。
この運転手がこれまでに血栓などの症状を起したことがないことから、労働局では同じ姿勢で長時間座り続けた場合などに発症する「ロングフライト症候群」(2000年当時はエコノミークラス症候群と表記)を起した可能性が高いと判断。業務に起因する疾患だったことを認め、今年7月14日に労災認定を遺族に通知している。
ロングフライト症候群とは同じ姿勢で身動きを取らず、長時間座り続けるなどした際に足の静脈に血栓が生じ、立ち上がった際などにそれが体の各部で留まって血管が詰まることで起きる。
元々は国際線を行く航空機のエコノミークラスで長時間座りっぱなしの乗客に多くみられたことから「エコノミークラス症候群」と呼ばれていたが、長時間同じ姿勢で座り続けていればファーストクラスの乗客でもこの症状を起すことから、現在では「ロングフライト症候群」と表記される。航空機だけに限らず、鉄道やバスに乗車中に起こることも想定されており、現代病として世界的に注目されている疾患のひとつだ。
ロングフライト症候群の発症を防止するためには適度なストレッチや水分補給を欠かさないなどの具体的な対策があるが、乗務中のタクシー運転手がこれらを行うことは難しく、ちょっとした体調の悪さなどと相まって一気に症状が悪化したものとみられている。