「ふらふら」でなく「勢いよく」---交通事故は殺人だった

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京都府警は10日、今年3月に京都市内で発生していた交通死亡事故について、保険金を騙し取ることを目的に起された偽装事故だったとして、被害者の妻や長男ら3人を殺人容疑で逮捕したことを明らかにした。

当初はごく普通の交通事故として処理していたが、被害者を道路側に突き飛ばすところを目撃した人物が警察に届け出たため、今回の事件が明らかになったとしている。

京都府警・捜査一課、同・堀川署の調べによると、問題の交通事故は今年3月9日の未明に発生している。同日の午前1時ごろ、京都市下京区五条通新千本東入付近の国道9号線で、当時68歳の男性が車道に飛び出し、走ってきた乗用車にはねられたというもの。男性は全身を強くうち、収容先の病院で死亡した。

警察に事故発生を通報したのは被害者の長男で、警察の取り調べに対しては「父がふらふらとした足取りで車道に向かい、次の瞬間にはクルマにはねられていた。止めることができなかった」と供述した。

警察では通常の事故として処理したが、この事故発生が報道された翌日、事故当時に対向車線側を通過していたクルマのドライバーが警察に出頭し、「被害者の男性は何者かに強く突き飛ばされ、車道に転倒したように見えた」と供述。男性をはねたドライバー自身も「ふらふらという感じではなく、横に勢いよく飛んできたという感じだった」と供述。一緒にいたという長男の供述に不審な点があることが浮上した。

警察で被害者の家族関係を調べたところ、被害者の妻が保険代理業を営んでおり、被害者には複数の生命保険の契約がなされていた。また、長男は約3000万円という多額の借金を抱えており、返済に悩んでいることがわかった。

警察では被害者の妻や、長男夫妻が男性を交通事故に見せかけて殺害し、多額の保険金を得ようと目論んだ殺人事件と断定。10日までに3人を殺人容疑で逮捕した。

警察の取り調べに対し、長男は「突き飛ばしたところを目撃したという証言はウソだ。父は自分から車道に向かっていった」などと供述。容疑を完全に否認しているという。

なお、保険金については生命保険会社も事故発生の経緯に疑問を持っており、現時点では全く支払われていないようだ。

《石田真一》

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