不審者情報は連絡されず----天皇陛下車列妨害

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今月4日、視察中の天皇皇后両陛下の御乗用車に向け、35歳の男が運転する軽自動車が衝突を試み、これを阻止しようとした皇宮警察の白バイが御乗用車と接触した事件について、北海道警は7日、事件発生前にこの男に数度の職務質問を行っていたことを明らかにした。しかし、不審者発見の情報は道警内でも共有されておらず、結果としてこれが事件を未然に防ぐチャンスを失うことになったようだ。

北海道警によると、公務執行妨害の現行犯で逮捕された35歳の男は事件発生の1時間ほど前から、天皇皇后両陛下の車列が通過する予定のコース付近に出没。複数の道警・警察官が目撃していた。

最初の職務質問は事件発生の40分ほど前で、両陛下の通行コース付近を警戒していた警官2人が、富良野市内の市道で布団などを積んだ不審な軽自動車を目撃。このクルマが路肩に止まったまま動こうとしないことから歩み寄り、運転席にいた男に職務質問を実施したという。

男は「神奈川から陛下に会いに来た」と話したが、この際に警官は「ここは停止してはいけない場所だからクルマを動かしなさい」と命じた。男はいったんその場を離れたが、15分後に150mほど離れた場所に戻ってきたところを同じ警官が確認。再度の移動を促した。

男のクルマはその後さらに600m移動したが、車列が進むコースの安全確認を行っていた道警の白バイ隊員が対向車線に止まっている軽自動車を発見。マイクで「停止禁止の場所だから即刻クルマを移動させなさい」と命じたという。

クルマは直後に発進したため、隊員もその様子を確認した後に移動を開始したが、事件はこの直後に発生している。クルマは指示どおり対向車線側を走っていったが、天皇皇后両陛下の車列とすれ違った直後にUターン。その後は猛スピードで対向車線を逆走し、衝突を試みた。

当時現場上空には道警のヘリコプターが飛んでおり、こうした不審者情報を警備本部で一括管理し、警戒連絡を行う体制であれば空からの監視も行える状態だった。しかし、実際には同じ不審者を3回も目撃しながら、警備本部に「不審者情報」として連絡されたのは1回目の職務質問時のみ。残る2回は連絡も入っていなかった。

こうした連絡の不備が事件発生を未然に防ぐチャンスを失うきっかけになったとも考えられることから、道警では関係者からの聴取を今後も続け、事件発生プロセスの解明を急ぐ。

《石田真一》

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