ため池へクルマ転落……防止義務は設置者にある

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2001年4月、静岡県袋井市で79歳の男性が運転するクルマが誤って農業用ため池に転落して死亡した事故の判決が3日、静岡地裁浜松支部で言い渡された。裁判所は袋井市に対して約4000万円の支払いを命じている。

遺族側は「事故はため池を管理する市がため池の存在を周知させる対策を怠り、転落防止の措置を取らなかったからだ」として総額6200万円あまりの損害賠償を求めていた。

判決によると、問題の事故は2001年4月15日に発生している。静岡県浜松市に住む79歳の男性が運転していた乗用車が袋井市付近をドライブ中、道路を逸脱して農業用のため池にクルマごと転落。この男性をはじめ、当時78歳から93歳の男女4人が溺死したというもの。

クルマは進行してきた道路を直進し、その突き当たりにあるため池へ真っ直ぐ突っ込んだとみられているが、池の周囲にはクルマの転落を防ぐような柵が設置されておらず、地元の地理に詳しくないドライバーにとっては「突き当りが池になっている」とは想定できない構造だという。

被告の袋井市は「死亡した男性のクルマは池に続く上り坂を徐行状態で走っていなかった可能性が高い。さらには前方不注意などが生じ、池の発見が遅れたことが事故に結びついた」と主張し、請求の棄却を求めていた。

3日の判決で静岡地裁浜松支部の千川原則雄裁判官は「問題のため池は転落防止の安全性の確保に欠け、事故は池の設置・管理を行った袋井市の瑕疵によって生じたことは明白だ」と市側の責任が大きいことを認めた。

さらに「池の存在を示す看板などがあれば、事故は未然に防げたかもしれないが、池に続く上り坂を徐行しなかったのはドライバーの重大な過失である」と、一定の過失責任がドライバー側にも生じていたことを認め、この部分を過失相殺し、総額4000万円あまりの支払いを袋井市に命じる判決を言い渡した。

《石田真一》

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