他人の住民票を移動して現金とクルマを騙し取る……懲役9年の実刑判決

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他人の住民票を勝手に移動して住民票や健康保険証などを入手し、それを基に口座を開設した消費者金融から借りた金でクルマを購入していたことで電磁的公正証書原本不実記録や詐欺など、合計14の罪に問われている23歳の男に対する判決公判が28日、仙台地裁で開かれた。裁判長は「社会に与えた影響は計り知れない」として懲役9年の実刑判決を言い渡している。

この男は「自分と同年代の人物の住民票を動かして、引っ越したことを装えば正規の健康保険証が手に入るのではないか」と思い立ち、2000年秋ごろからそれを実施していた。当初は他人名義の健康保険証を入手し、消費者金融から不正に現金を引き出す程度の犯罪だったが、これが発覚しにくいことを実感すると犯行がエスカレート。

携帯電話の出会い系サイトで知り合った女子高生らに「短時間で高収入が得られる良いバイトがある」と持ちかけ、女性名義の住民票の移動も行っていた。また、これと並行して勝手に婚姻届や養子縁組の手続きも行い、使える名義の保険証を増やしていった疑いも持たれている。

身分証明書は現金の引き出しに使われるだけではなく、盗難したクルマの名義を合法的に書き換える際にも使用されていたとみられ、判明しているだけで10台(約1400万円相当)が他人名義で売買されていた。

この事件が発覚したきっかけとなったのは、ターゲットとされた人物が住民票の取得を行おうとしたり、婚姻届を提出したりしようとしたときで、中には自分がすでに見知らぬ他人と結婚していたことになっており、戸籍に婚姻歴が記載されていたことでショックを受けた女性もいた。

この事件を機に戸籍法は昨年12月に改正され、虚偽の届けが出された場合には従来のようにX印で抹消するのではなく、新たに作り直して虚偽の届けが行われた形跡自体を抹消することも認められている。

28日の判決公判で仙台地裁の畑中英明裁判長は「被告は雑誌の記事などを参考にしながら、次々と犯行計画を考え出し、犯行を重ねる度に手口を悪質化させた。最終的には他人を使って犯行を実行させるなど、自分の姿を晒さないという巧妙な手口も確認できる」と指摘。

その上で「勝手に婚姻届を提出するなどして戸籍制度の信頼を損なわせただけではなく、知らない間に被害にあった人たちに不都合や困惑、不安などの精神的苦痛は甚大である」と断罪した。

そして「被告の犯行は累犯事件を誘発させる模倣性もあり、戸籍法の改正も行わせるなど社会に与えた影響は計り知れない」として懲役9年の実刑判決を言い渡している。

《石田真一》

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