事故に直結する過酷な労働を命じた責任は重い

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三重県鈴鹿市の東名阪自動車道で居眠り運転の大型トラックが渋滞中の車列に突っ込み、その後に生じた車両火災で11人が死傷した事故で津地裁は14日、事故を起こした運転手に過酷な労働を命じていた運送会社の運行管理者2人に執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。

裁判官は「運転者の労働条件を改善する立場にありながら、その責任を自覚せず、安易に過重労働を行わせた責任は重い」と断罪している。

問題の事故は昨年8月10日の早朝に発生している。帰省ラッシュによる渋滞のため、三重県鈴鹿市内の東名阪自動車道下り線・鈴鹿インターチェンジ付近で停止していた車列に後方から走ってきた大型トラックが減速しないまま追突。7台が絡む多重衝突となり、漏れたガソリンに引火してうち4台が出火。結果、逃げ遅れた5人が焼死、6人が重軽傷を負う事故となった。

事故の原因は追突してきた大型トラックの過重労働が原因と判断された。この運転手は56時間の連続勤務に就いており、事故の前日から意識が朦朧とする中で無理に運転を続け、追突時には完全な居眠り状態だったという。

警察では運転者に事故の責任が生じるのはもちろん、過酷な勤務を命じた会社の運行管理者2人にもその責任は及ぶと判断。道路交通法違反(過労運転容認)の疑いで逮捕していた。

14日の判決公判で津地裁の天野登喜治裁判官は「本来は運転者の健康状態をチェックし、無理な労働をさせないために機能するはずの運行管理者がこの会社では逆に作用し、運転手に過酷な労働を押し付ける状態になっていた」と指摘。過労運転が会社の命令で行われ、それを容認する体質だったという検察側の主張を全面的に認めた。

その上で「両者は運転者の労働条件改善を経営側に具申する立場であったにも関わらず、その責任を自覚することなく、過酷な運行プランを安易な考えで作成していた罪は重い」として、懲役1年の求刑に対し、懲役1年(執行猶予5年)の有罪判決を言い渡した。

《石田真一》

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