同乗者にも賠償責任……泥酔したドライバーの運転を止めなかった

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泥酔状態でひき逃げ事故を起こし、危険運転致死罪で懲役8年の実刑が確定した37歳の男に対し、被害者の遺族側が起こしていた総額9500万円の支払いを求める損害賠償請求訴訟の判決が8日、東京地裁八王子支部で行われた。裁判所は事故を起こした男だけではなく、この男の泥酔状態を知りながら運転を止めなかった同乗者に対しても連帯して賠償金の支払いを行うように命じている。

この事故は2002年1月23日の深夜に発生した。多摩市中沢の都道を走っていた19歳の少年が運転するバイクが後方から走ってきたワゴン車に追突されて転倒。約90メートルひきずられた末に放置された。少年は病院に収容されたが、頭部強打や内臓破裂が原因で死亡している。警察では現場近くのガソリンスタンドにいた36歳の男を業務上過失傷害と道路交通法違反(酒酔い運転、ひき逃げ)の容疑で逮捕した。

その後の調べで、この男は事故の直前には歩けないほどの泥酔状態だったが、八王子市内を走行中に他のバイクと接触事故を起こし、その現場から逃走している途中にこの死亡事故を起こした。

事故後は泥酔状態を隠蔽しようとコンビニエンスストアで日本酒を購入。それを一気に飲み干すことでアルコール検知を困難にするなどの証拠隠滅工作を行っていたこともわかった。検察側は業務上過失致死罪で起訴したが、遺族側が法務省に「何のための危険運転罪なのか」と質問状を送り、訴因に危険運転罪を追加するように要請。後に裁判所の判断で危険運転罪に集約され、男は懲役8年の実刑判決を受け、すでに刑として確定している。

8日に行われた損害賠償訴訟(民事)の判決で、東京地裁八王子支部の中山幾次郎裁判官は、泥酔した男の運転を止めようとしなかった同乗者にも「キーを差し込めないほど酔っているなど、明らかに運転をさせてはいけない状態だったにも関わらず、運転を制止しなかったことは事故の発生と相当因果関係がある」と指摘。

また、事故の発生とは関連がないとして賠償金の支払いを拒んでいた男の勤務する会社(事故車の所有者)にも「自動車損害賠償保障法上の責任は存在する」と結論づけた。このため賠償金の支払いについても「3者が連帯して支払うべきだ」として、総額5180万円の支払いを命じている。

《石田真一》

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