衝突事故発生のプロセスにパトカー追跡は入らない---遺族側は不服

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パトカーから追跡を受けていた飲酒運転のクルマと衝突する事故を起こして死亡した男女の遺族が「事故の責任は、パトカーと飲酒運転のクルマの双方にある」として、長野県(県警)と飲酒運転していた男を相手に総額1億9700万円の損害賠償を求めていた民事訴訟の控訴審判決が10日、東京高裁で開かれた。

高裁は一審で行われた審理の分離を支持。飲酒運転をした男に対して総額1億0821万円の支払いを命じ、警察の責任を回避する内容の判決を言い渡した。原告は「警察の責任とセットで判断されなければ意味はない」として上告する方針。

問題の事故は2001年12月1日未明に起きた。長野市内の国道18号線でフラフラとした挙動で走るクルマを長野県警・長野中央署のパトカーが発見。停止を求めたが、クルマはスピードを上げて逃走を開始した。パトカーはしばらく追跡を続けたものの、途中でこのクルマを見失った。その直後に逃走車は他車と衝突する事故を起こし、衝突された側のクルマに乗っていた男女2人が死亡した。警察に発見された当時、クルマを運転していたのは当時24歳のブラジル国籍の男で無免許。衝突事故の直前、警察に捕まることを覚悟して運転を交替した22歳の男も酒気帯び状態だった。

遺族は「パトカーの無理な追跡が無ければ事故は起きなかった。責任の一端は警察にもある」として、衝突事故を起こしたクルマの運転手と警察(県)が連帯して賠償金を支払う必要があるとして提訴していた。

しかし、一審の長野地裁では「分離して判断する必要がある」として、クルマを運転していた男と、警察の審理をそれぞれ別のものとした上で、実際に事故を起こした男に対してのみ、賠償金の支払命令を出していた。これに遺族側は反発。「三者一体で責任を確定すべきであり、審理が尽くされたとはいえない」と主張し、控訴審では一審への差し戻し判決を求めていた。

10日の判決で東京高裁の浅生重機裁判長は「警察のパトカーの追跡に無理はなく、追跡が原因で衝突事故が発生したとはいえない」として警察の責任を回避。その上で一審で判断された賠償金額を一部変更し、総額1億0821万円の支払いを事故を起こした男に支払うように命じた。

遺族側は「裁判は警察の責任追及を無視し、賠償額の決定だけ性急に進めようとしたもの。事故は警察の容疑車両追跡が発端となっており、事故を起こしたドライバーと警察側の責任がセットで判断されなければ意味はない」として最高裁に上告する方針を示している。

《石田真一》

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