強引な横断を予見することはできない---タクシー運転手に逆転無罪の判決

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対向車線で渋滞中のクルマをすり抜けるようにして横断してきた女性をはね、重傷を負わせたことで業務上過失傷害罪に問われていた57歳のタクシー運転手に対する判決公判が27日、大阪高裁で開かれた。裁判長は一審の神戸簡裁判決による罰金刑を破棄し、逆転無罪を言い渡した。

この事故は2000年12月、神戸市須磨区の市道で起きた。対向車線で渋滞中のクルマの間をすり抜けるように足早に駆けてきた女性をタクシーがはねて重傷を負わせたというもの。警察は当時55歳のタクシー運転手に前方不注意だった可能性を指摘。これを事故原因として送検。一審の神戸簡裁も「男性は横断者の存在に注意を払い、速度を落とす必要があった」として15万円の罰金刑を言い渡した。

しかし、この運転手は事故現場が横断歩道のある場所でないために減速義務は無かったと主張。当時は男性が走行していた側の車線でも混雑が始まっており、40km/h制限の道路を20〜25km/hの低速で走っており、たとえ前方を注視していたとしても直前横断してくる人を回避できたとは考えにくいとして大阪高裁に控訴していた。

27日のの控訴審判決公判で大阪高裁の白井万久裁判長は、女性が横断歩道ではない場所を、渋滞中のクルマをすり抜けるようにして足早に渡ろうとしていたことを認定。横断歩道ではないため、歩行者が出てくることは予見不能だったという被告側の主張を全面的に認めた。その上で「横断する女性を発見した地点より以前でブレーキを掛けたとしても、距離的な余裕が少ないことからクルマを止めて事故を回避できた可能性は少ない。横断を予見して速度を落とすという注意義務もなく、前方不注意にも当たらない」と認定し、一審の神戸簡裁判決を破棄。改めて男性無罪の逆転判決を言い渡した。

《石田真一》

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