暴走行為の途中にトラブルとなった男性を殴り、死亡させたとして傷害致死罪に問われたものの、目撃証言が信用に値しないということで無罪となっていた男性2人が「事件に関わっていないという証拠が十分に検討されなかった」として、国や大阪府などを相手に約3000万円の損害賠償を求めていた民事訴訟で、大阪地裁は17日、この2人の請求を棄却する判決を言い渡した。
問題の事件は1995年4月23日、大阪府吹田市内で発生した。同市を拠点とする暴走族のメンバーが市道で暴走行為を行っていた際、通りがかった21歳男性に因縁をつけ、集団で殴るなどして死亡させたというもの。警察はこの暴走族メンバーと関係の深かった男性2人(当時16歳と18歳の少年)を「犯行に関与した」として傷害致死容疑で逮捕。後に同罪で起訴されていた。
ところが刑事裁判では「実際の犯行に関与した者が“この2人もたぶんいた”ということを犯行関与の拠り所としているが、曖昧な点が多くて信用に値せず、2人が関与していたという決定的な証拠は何ひとつ示されてない」として大阪地裁、大阪高裁とも無罪判決を言い渡した。
このため2人は「事件に関与しているだろうという警察の思い込みと、違法な取り調べで長期間の拘束を余儀なくされた」として、国や大阪府を相手に総額約3000万円の賠償請求を行っていた。
17日の判決で大阪地裁の谷口幸博裁判長は「取り調べや起訴などの手続きに違法な点はなかった」と判断。「2人が事件に関与していたという証言は、暴走族グループの複数メンバーが供述しており、関わっていないことを証明する証拠が得られなかった以上、関与していないという結論に達することは当時の状況からは不可能だった。また、捜査にも違法性はない」として、男性らの訴えを棄却する判決を言い渡した。