暴走族による殺人は偶発的な事故ではない---裁判長が弁護側に一喝

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昨年11月、群馬県太田市で暴走族同士が縄張りを巡って激しく争い、乱闘に参加したメンバー1人がナイフで胸などを刺し、殺人罪で起訴されていた当時19歳の少年に対する判決公判が宇都宮地裁栃木支部で10日に開かれた。裁判長は「犯行は著しく危険で悪質」として、少年に対して懲役9年の実刑を言い渡した。

この事件は昨年11月4日早朝に起きた。群馬県足利市を本拠地として活動する暴走族グループと、太田市を拠点として活動するグループが縄張り争いを発端として激突。総勢50人あまりでの大乱闘となった。この乱闘に参加していた被害者が「卑怯なことをする連中だ」と挑発したことに被告の少年が腹を立て、隠し持っていたバタフライナイフで左胸を集中的に刺して殺害したというもの。被害者の出血量はおよそ2リットルに達し、失血死した。平均的な成人男性の血液量は4.8リットル程度で、1/3(約1.6リットル)が失われると生命維持が出来なくなると言われているが、被害者はそれを超える量を失うほどの傷を負った。

被告少年の弁護側は「被害者が失血死したのは運の悪い偶然だった」と主張。そこに至る原因を作ったのは「挑発的行動がを行った被害者本人」として、殺害に計画性が無く、相手にも一因があるとして正当性を繰り返した。

10日の判決で宇都宮地裁栃木支部の滝沢雄次裁判長は、「凶器の種類、被害者損傷の程度、攻撃の態様などから、確定的な殺意が認められる」と被告側の主張を全面的に退け、さらに「殺害は結果が極めて重大かつ悲惨」と断罪した。しかし、弁護側の主張はともかく、被告本人については「自分の起こした罪を反省しており、更生する余地は期待できる」として、懲役14年の求刑に対し、懲役9年の実刑判決を言い渡した。

《石田真一》

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