昨年7月、兵庫県神戸市北区内の中国自動車道下り線で、大阪市在住の女子中学生が監禁から逃れようとしてクルマから落下、その後死亡した事件で、神戸地裁は25日、この中学生を拉致監禁した元教諭に対して懲役6年の実刑判決を言い渡した。
この事件は昨年7月24日の夜、友人に「男友達と会う」と言って姿を消した女子中学生が、その数十分後に手錠を付けた状態で中国道の本線上に放置された状態で見つかったというもの。直接の死因は後続のトラックにひかれたことによる失血死だが、手錠を付けた状態で発見されていることから警察では監禁事件として捜査。電話の通信記録などから、兵庫県香住町で中学校教師をしている男の存在が浮上し、後に容疑を全面的に認めているために逮捕・起訴されていた。
今回の裁判で検察側は「援助交際ではなく、最初から暴行する目的で女生徒を監禁し、この女子生徒が車外に落下したことを認知しながらも、自分の保身を優先するあまりに現場から立ち去っており、殺人罪に匹敵する重罪」として、裁判所側に懲役12年の実刑判決を求めていた。
これに対して弁護側は「監禁しようとした事実はあったにせよ、女子生徒がクルマから飛び降りることは被告の想定外で、しかも死因は後続車にあるのだから過失致死や殺人と同レベルの重罪はあまり酷である。援助交際をして金銭を得ようとしていたことなども判断すれば、責任は死んだ女子中学生にも存在する」と真っ向から反論する姿勢を見せていた。
25日に行われた判決公判で、神戸地裁の森岡安広裁判長は「女子生徒がクルマから飛び降りることを予想できなかったという弁護側の主張にも合理性がある」として、弁護側の主張を採用。また「テレホンクラブなどで知り合った見ず知らずの男性と金銭授受の絡む援助交際を目的に会おうとしており、被害者に全く落ち度がなかったとはいえない」として、被害者側の責任を言及した。その上で「卑劣な犯行で、刑事責任は重大だが、被告の監禁行為自体から致死の結果が生じたものではない」などして、懲役6年の実刑判決を言い渡している。
判決理由の中で、裁判長は元教諭の救護義務違反の認定もしているのだが、実際には予想以上に軽い判決となった。危険運転罪の施行により、クルマの運転に関係する罰則は昨年末に強化されており、全治1カ月程度のケガで2年の実刑という目安になっている。今回の犯罪はクルマが関係するという点では全く変わりなく、その内容自体は非常に凶悪といえるものだが、言い渡された刑罰は軽い。言葉を変えれば、危険運転罪は現状にマッチしたといえるが、他の法律が現状に追いついておらず、飲酒運転による殺人の方が、通常の過失致死罪より重い判決が生じやすいという逆転現象を生んでいる。