真実は勝つ---警察の固定観念を打ち破るまでに丸2年

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審理不充分として東京高裁から差し戻されてきた交通事故を巡る裁判で、水戸地裁は18日、一審の簡易裁判所が言い渡した有罪判決を破棄し、業務上過失致傷罪に問われていた46歳のトレーラー運転手に逆転無罪の判決を言い渡した。

問題となった事故は2000年2月、茨城県北浦町で起きた。国道の丁字路交差点で大型トレーラーが右折しようとした際、右方から来た乗用車と衝突、このクルマのドライバーが右足の骨を折る重傷を負った。

事故直後からトレーラーの運転手は「曲がりきれずに切り返しをしている際、右から来た自動車が突っ込んだ」と証言していたが、茨城県警はこの証言を受け入れずに、トレーラー運転手の安全義務に怠りがあったとして、業務上過失致傷罪で送検。検察はこの運転手に罰金50万円の略式命令を言い渡していたが、運転手はこれを不服として通常裁判に移行し、一審の水戸地裁麻生支部は罰金35万円を言い渡した。

しかし、トレーラー運転手は「右折を開始したとき、衝突してきた乗用車はトレーラーの進路方向にいなかった。ケガをしたという主張を元に嘘の証言が取り入れられ、あとから走ってきたことが受け入れられていない」として控訴。二審の東京地裁は捜査を実施した茨城県警が的確な現場検証を行っていないことや、入院治療を理由に相手乗用車側の取調べが不充分だったことに触れ、事実関係の審理が不充分として、水戸地裁に差し戻す判断を行っていた。

差し戻し審では検察が改めて現場検証を行い、結果として、トレーラーが右折を始めた地点ではトレーラー運転手は乗用車を目視できていないこと、より正確には乗用車がその当時その場所にいなかったことが発覚。トレーラーが切り返しを始めたところに、乗用車がスピードの出しすぎで止まりきれずにトレーラーに衝突したという事実が明らかになった。

このため18日の判決で水戸地裁の鈴木秀行裁判長は「被告の供述は信用できる」とし、トレーラー運転手を逆転無罪とする判決を言い渡した。

事故発生の段階で警察が相手側の過失も想定し、きちんとした現場検証を行っていれば、事態がここまで紛糾することも無かっただろう。「ケガさせた側が悪い」という先入観があったか。

《石田真一》

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