「被害者が加害者に賠償しろ!!」算定ルールに沿ったらこんな判決に

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「踏切で電車と衝突する事故を起こしたのは、踏切の故障を放置した鉄道会社にある」として、1996年1月に福井県内で事故を起こした男性が鉄道会社を相手に争っていた裁判で、福井地裁武生支部は12日、原告と被告の双方に責任があるという判決を言い渡した。

この事故は1996年1月18日、福井県鯖江市内の福井鉄道線の踏切で、67歳の男性が運転する乗用車と電車が衝突。この男性が肩の骨などを折る重傷を負ったというもの。福井県警や鉄道会社が現場検証を行った結果、事故当時この踏切では遮断機と警報機が故障しており、列車が接近していたとしても両方とも作動できない状態にあったことがわかった。また、この現場は道路側から線路の見通しが極端に悪く、列車が踏切から15メートルの距離まで接近しないと、停止位置からは視認できないことも明かになった。

このため、被害者の男性は鉄道会社を相手取り「鉄道会社は踏切を含む信号設備を点検し、危険や事故を未然に防止する義務を負う」として、総額627万円の賠償請求を福井地裁に提訴した。が、鉄道会社はこれに猛反発。「踏切の遮断機が故障し、開いている状態でも電車の通過が全くないとは言えず、今回の事故もクルマを運転していた男性が左右確認義務を怠ったために生じた」として、男性に対して事故で壊れた電車の修繕費用など710万円を求める反訴請求を行った。

普通に考えても鉄道会社の反訴理由はかなり苦しいものだが、12日に福井地裁武生支部で行われた判決では、大崎良信裁判官が「事故を起こした電車の運転士は、信号表示などで遮断機が動作していないことを認知できていた。警笛を鳴らし、徐行した上で通過するなり、現場付近で停止するなりできたはずで、これは事故を防ぐ義務を怠ったとしか判断できない」として、鉄道会社側に209万円の支払いを命じた。

しかし、その一方で「踏切手前の一時停止標識に従って停止し、その位置で左右を確認しても、踏切の安全を確認し尽くしたとは言えない」として、男性側に対して288万円の支払いを命じるという判断も行った。その結果、被害者である男性が、踏切の故障を放置した鉄道会社に79万円の支払いを行う必要があるという、何とも納得しがたい妙な判決が行われることとなった。

これは過失相殺を行った結果、元々の請求額が大きかった鉄道会社の残り分の方が勝っていたことから生じるものだが、ごく一般的な感覚からしてみれば「ヘン」としか言いようがない。鉄道車両が関係するのは珍しいとしても、10年落ちのクルマ(被害者)に、新車の高級輸入車(加害者)が衝突した場合などでは同様の判断となることが多い。加害者の方が損害額が大きいから、双方に過失が生じたと判断されたときには、このような逆転現象になる。とにかく事故には注意が必要だ。

《石田真一》

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