2023年5月の自動運転、高度運転支援(ADAS)に関するニュースまとめ一覧

自動運転の世界は、いまどんなフェーズを駆け上がり、どこへ向かっているかーーー

そのヒントは、国内で自動運転の舵取り役を担う戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の動きを俯瞰するとみえてくる。SIPは、内閣府がリーダーシップをとり、府省庁の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより科学技術イノベーションを実現するために2014年に創設された国家プロジェクト。

2019年7月までSIP自動運転推進委員会構成員を務め、現在は国土交通省車両安全対策委員、経済産業省・国土交通省自動走行ビジネス検討会委員でもある、国際自動車ジャーナリストである清水和夫氏にSIP 第1期から第2期へと向かう自動運転分野のいま、サポカーと自動運転、物流・移動サービスとオーナーカー、安全と安心感、快適性といった、自動運転まわりのトレンドを聞く。

聞き手は、SIP自動運転推進委員会構成員でモータージャーナリストの石井昌道氏。


清水和夫氏

清水:いまニュースは、MaaS(Mobility as a Service シームレスにつなぐ新たな移動)とかトラックの自動縦列走行やロボットタクシーに注目が集まって、オーナーカーの自動運転は高額な高級車だけにある機能にみえて一般ユーザがついてこないという感じですよね。

需要や関心度としては、過疎地や物流の課題を救う手段として物流移動サービスのほうが高い。オーナーカーの自動運転フェーズはいま高速道路のなかにあって、歩行者事故の分野にはまだ至ってない。だからまだ「高速道路を行く高級車の車内でハンドルから手を離してスマホや雑誌をながめる」といったイメージしか浮かばないかもしれない。

でもね、最初は高額な高級車の自動運転技術であっても、その実現がないとレベル4へもステップアップできないし、オーナーカーがレベル3で培った技術は、物流移動サービスにも波及するから、やっぱり物流もオーナーカーも両面から進化していかないと。

石井:なるほど。では、安全と快適性について。これはどう違うのか。

清水:すでにACC(Adaptive Cruise Control)などはドライバーは当たり前のように使う機能に普及した。前のクルマにロックオンして追従していけば楽だし、最も左の走行車線を一定の速度で行くという選択もできる。そういう意味ではACCは自動車メーカーでは快適技術として位置づけられていた。で、ACCの延長線上に自動運転の技術が生まれてくるとは思いますけどね。

石井:安全と快適性のなかに、安心が入ってこないと、クルマとドライバーが共存できませんよね。

清水:これはもう永遠のテーマで、たとえばタイヤのグリップ性能とウェット性能のように、安全基準を満たしていても安心感はないという事象っていっぱいありますよね。ユーザがその製品に共感できるか否かは、やっぱり「安心かどうか」なんですよね。さらに安心なくして快適はないから、ユーザ目線でいうと安心が前提にあって、安心だから快適があって、楽しさもある。だから底辺は安心、その上に順に快適、楽しさがのる。

清水和夫氏

石井:開発現場では「開発すればするほど、壁が立ちはだかる」っていいますね。やはりレベル3はそうかんたんじゃないと。

清水:大事なのは社会やユーザが何を求めて、自動運転を手に入れたらどんな幸せがあるのか。カスタマーベネフィットみたいなところまで考えていかないと。いっぽうで、自動運転車両は高い買い物なので、スバルのアイサイトを10万円でつけるか、100万円の自動運転機能付き車両を買うかもいろいろあると想うし、駆ってくれないと技術は進歩しないし、普及しないとコストは下がらないし、と。負のスパイラルに陥っちゃう。

石井:その先はけっこう難しそうですね。

清水:高級車から自動運転レベル3が入ってきて、こんどはいかに大衆車に自動運転技術を入れ込んでいくかがカギですよね。でも日本はこれまで、軽自動車にエアバッグとプリテンショナーベルトを一気に導入させた実績を持つ国だから、「これがいいんだ!」って確信したら、オールジャパンでダーッてかなりの勢いで普及すると思いますね。

だから軽自動車側からサポカーが進化して、高級車カテゴリから自動運転がすすんでごその技術が大衆車へおりてくる。その出会うポイントがプリウスとかカローラといったCセグメントで、2024年か2025年といわれてますよね。


インタビュー全文はこちら


  • SIP cafe 自動運転ガイド
  • SIP cafe とは

    SIP cafe とは

    『SIP cafe』は直面する次世代モビリティについて考え、自動運転のいま、自動運転がもたらす未来社会について情報を発信していくコミュニティサイトとして2019年10月に開設。一方的な最新情報の発信だけでなく、広く多くの人たちが集まって議論していくための“広場”としての役割を担う。SIP cafeの主宰であり“マスター”の清水和夫氏は、「反対する意見もどんどんぶつけあって、議論していく場所にしたい」と語っている。

    » 詳しくはこちら
    1 2 > 次
自動運転レベル4によるバス輸送サービスを社会実装、国交省が事業を募集 画像
プレミアム

自動運転レベル4によるバス輸送サービスを社会実装、国交省が事業を募集

国土交通省は、地方公共団体や民間団体が自動運転によるバス輸送サービスの社会実装を推進する。

自動運転車と連携する路車協調システムの実証実験を実施へ 画像
プレミアム

自動運転車と連携する路車協調システムの実証実験を実施へ

国土交通省は、自動運転技術と連携する路車協調システムの実証実験を実施する。

流行のカーフィルムはADASに影響しないの?…スペシャリストが検証した 画像
自動車 テクノロジー

流行のカーフィルムはADASに影響しないの?…スペシャリストが検証した

千葉県浦安市の株式会社車検・鈑金デポは、フロントガラスへのカーフィルムの貼付はカメラに影響を及ぼさないのかという疑問を解決するために独自の検証を行った。

グーグル「ウェイモ」、ウーバーと提携…ウーバーのアプリで自動運転車が呼び出し可能に 画像
プレミアム

グーグル「ウェイモ」、ウーバーと提携…ウーバーのアプリで自動運転車が呼び出し可能に

グーグルの自動運転技術開発部門のウェイモ(Waymo)は5月23日、配車サービス大手のウーバーテクノロジーズ(以下、ウーバー)と戦略的提携を結ぶと発表した。

自動運転、水素、電動部品、愛知製鋼は素材技術で貢献…人とくるまのテクノロジー展2023出展予定 画像
自動車 ビジネス

自動運転、水素、電動部品、愛知製鋼は素材技術で貢献…人とくるまのテクノロジー展2023出展予定

愛知製鋼は、5月24日から26日まで、自動車技術の専門展「人とくるまのテクノロジー展2023横浜」(パシフィコ横浜、主催:自動車技術会)に出展する。「次世代の自動車に貢献する技術」が出展テーマだ。

国内初のレベル4無人自動運転移動サービス、福井県永平寺町で開始 画像
自動車 テクノロジー

国内初のレベル4無人自動運転移動サービス、福井県永平寺町で開始

5月21日、国内初となるレベル4自動運転(条件付き完全自動運転)移動サービスが永平寺町(福井県)でスタート。「永平寺参ろーど(全長約8km)」内の荒谷~志比区間(約2km)での走行を開始した。

持続可能な社会に貢献するモビリティ技術…日立アステモが人とくるまのテクノロジー展2023で紹介へ 画像
自動車 ビジネス

持続可能な社会に貢献するモビリティ技術…日立アステモが人とくるまのテクノロジー展2023で紹介へ

日立アステモは、5月24日から26日までパシフィコ横浜で開催される自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2023 横浜」(主催:自動車技術会)に出展、持続可能な社会の構築のために次世代車両に必要とされる、先進的なモビリティソリューション・技術を紹介予定だ。

ヴァレオ、第3世代となるLiDAR「SCALA3」と自動運転に効果的な「パントマイム」をデモ 画像
プレミアム

ヴァレオ、第3世代となるLiDAR「SCALA3」と自動運転に効果的な「パントマイム」をデモ

フランスの自動車部品メーカー「Valeo(ヴァレオ)」は、5月24日からパシフィコ横浜で開催される「人とくるまのテクノロジー展2023横浜」に出展する。それに先立つ5月19日、同社はテストカーによる「パントマイム」や、第3世代LiDAR「SCALA3」の検知デモを公道で実施した。

鉱山の無人ダンプトラックの運行システムで小型車両も自動走行、コマツとトヨタが共同開発へ 画像
プレミアム

鉱山の無人ダンプトラックの運行システムで小型車両も自動走行、コマツとトヨタが共同開発へ

コマツとトヨタ自動車は5月17日、無人ダンプトラック運行システム(AHS)上で自動走行するライトビークル(ALV)の開発にて協業を開始すると発表した。

自動運転ロボットの専用保険商品を開発、道交法改正を受けて 画像
プレミアム

自動運転ロボットの専用保険商品を開発、道交法改正を受けて

あいおいニッセイ同和損害保険とZMPは、安心、安全な自動運転ロボットの普及を促進するため「自動運転ロボット専用保険プラン」を開発して5月から販売する。

ボードリー、自動運転レベル4対応EVバスを日本市場に導入へ…エストニアのメーカー 画像
プレミアム

ボードリー、自動運転レベル4対応EVバスを日本市場に導入へ…エストニアのメーカー

ソフトバンクの自動運転サービス子会社のボードリーは、自動運転シャトルを手がけるエストニアのオーブテックが製造する自動運転レベル4対応の自動運転電気自動車(EV)「MiCa(ミカ)」を世界で初めて購入し、日本に導入する。

初の「自動運転レベル4」運行サービスを開始へ…遠隔監視のみ、福井県永平寺町で 画像
プレミアム

初の「自動運転レベル4」運行サービスを開始へ…遠隔監視のみ、福井県永平寺町で

経済産業省と国土交通省は、福井県永平寺町で実施する自動運転レベル4(条件付き完全自動運転)の実証実験について、道路交通法に基づく特定自動運行の許可を国内で初めて認可し、自動運転移動サービスが実用化される。

集計結果発表!2択アンケート「マイカーの自動運転、あり?なし?」【クルマら部 車論調査】 画像
モータースポーツ/エンタメ

集計結果発表!2択アンケート「マイカーの自動運転、あり?なし?」【クルマら部 車論調査】

自動車ニュースのレスポンスが贈る、クルマ好きのためのLINE公式アカウント『クルマら部』(ベータ版)!「クルマの車論調査」の集計結果を発表です。お題は「マイカーの自動運転、あり?なし?」でした。結果は…?

メーカー自ら導入、長野県上田市で自動運転EVバスの実証実験 画像
プレミアム

メーカー自ら導入、長野県上田市で自動運転EVバスの実証実験

HIOKI(日置電機)とマクニカは、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、自動運転EV(電気)バスを社会実装する。

ポルシェもハンズフリー走行が可能に、将来の市販車で…戦略的提携を発表 画像
プレミアム

ポルシェもハンズフリー走行が可能に、将来の市販車で…戦略的提携を発表

ポルシェ(Porsche)は5月9日、インテル傘下のモービルアイとの間で、先進運転支援システム(ADAS)の量産に向けた戦略的提携を締結した、と発表した。

    1 2 > 次
Page 1 of 2