拡張現実(AR)ヘッドアップディスプレイ(HuD)は、コンセプトカー向けの技術から量産車向けコックピットへと急速に移行しつつあります。ナビゲーション情報や危険箇所等ドライバー支援情報を、ドライバーの視線上に直接表示できることから、その期待は高まっています。こうした需要を受け、ディスプレイ開発エンジニアは光源エンジン全体の見直しを迫られています。具体的には、日中でも十分な視認性を確保できる高輝度性、パネル内の限られたスペースに搭載できる小型性、視認性やユーザーエクスペリエンス(UX)を損なわない高い色の再現性、さらに自動車業界の各種規格を満たす安全性が求められています。この課題に対し、プロジェクション用途向けのRGB LED光源は、実用的なAR-HuDを実現するための現実的かつ高性能なソリューションとして注目を集めています。
消費者の間では、先進的な運転支援システムやプレミアム機能への期待がますます高まっています。これに伴い、HuDの需要は高級車から中価格帯車種にも急速に広がりつつあります。しかし、その普及には依然としてコストや技術面でのハードルが存在しており、より幅広い市場への展開にはこれらの課題を克服することが求められています。
車載HuD開発における現在の主な課題
小型化・実装性への要求:HuDの投影光学系やプロセッサー、光源ユニットは、限られたスペース内に搭載しなければなりません。設計においては数ミリ単位での小型化が求められ、大型の光学エンジンは重量増やコスト増だけでなく、システム統合の複雑化にもつながります。
日中視認性を確保する高輝度・高コントラスト性能:AR映像を直射日光下や反射の強いフロントガラス越しでも確実に視認できるようにするには、非常に高い光束出力と優れたコントラスト性能が求められます。一方で、熱設計、消費電力、製品寿命といった厳しい制約条件を満たしながらこれを実現することは容易ではありません。
色再現性と色域性能:AR表示に用いられるシンボルやグラフィックスは、さまざまな視認環境や車両間においても、一貫した色表現と十分な彩度を維持する必要があります。例えば、警告を示す赤色やナビゲーション経路を示す緑色は、常に明確かつ直感的に認識できなければなりません。色再現性が不十分な場合、ユーザーエクスペリエンス(UX)の低下だけでなく、安全性にも影響を及ぼす可能性があります。
光学エタンデュと光結合効率:DMD(Digital Micromirror Device)やLCoS(Liquid Crystal on Silicon)を採用したプロジェクターでは、光源の空間的および角度的な発光特性が、投影光学系が要求するエタンデュと適切に一致している必要があります。一致しない場合、光利用効率が低下して多くの光が損失となるほか、必要な明るさを確保するために投影光学系の大型化を招きます。エタンデュの不整合は、光学システム全体のサイズ増大、消費電力の増加、さらには発熱量の増大につながる重要な設計課題です。
安全性および各種規格への適合:ドライバーの視界内に高い放射光束を投射する光源には、光生物学的安全性、車載EMC(電磁両立性)、機能安全などの厳格な要件への適合が求められます。特にレーザーのようなコヒーレント光源は、網膜への危険性やスペックルノイズの発生リスクを伴うため、より厳しい規制や評価の対象となります。
システムの複雑化(熱設計・電力管理・制御):高輝度投影システムの実現には、高度な熱マネジメントに加え、精密な電流制御やダイナミック輝度制御(HDR表示やアダプティブディミング)が不可欠です。また、LED光源をイメージャー、タイミング制御回路、センサーフュージョンシステムと統合する必要があり、システム開発の複雑さが増しています。
アライメント、キャリブレーションおよび信頼性:AR-HuDでは、仮想コンテンツと実世界の映像を高精度に重ね合わせることが求められます。そのため光源には、温度変化や振動、長期使用による経年劣化の影響下においても、色度、輝度、投影特性を安定して維持できる高い信頼性が求められます。
RGBプロジェクションLEDが車載ARの中核技術になりつつある理由
OSRAM OSTAR(TM) Projection Compact LEDシリーズの新世代RGB LEDは、こうした課題に対応する有力なソリューションとして注目されています。
コントラスト性能の重要性:LCDバックライト方式を上回る高コントラスト
プロジェクション向けRGB LED光源は、車載AR-HuDにおいて数多くの重要な利点をもたらします。LCD方式では光を遮断して映像を生成するため、バックライト漏れによるコントラスト低下を避けることができません。一方、OSRAM OSTAR(TM) Projection Compact LEDは、DMDやLCoSといった空間光変調器と組み合わせることで、高コントラストな映像を実現します。
この高いコントラスト性能により、表示画質と視認性が大幅に向上し、警告シンボルやナビゲーションガイド、各種AR情報を鮮明かつ明瞭に表示することが可能になります。
コンパクトなDMD構成と高輝度RGB光源を採用したシステムでは、最大16,000ニトのピーク輝度を実現しています。これにより、強い日差しの下や偏光サングラス着用時においても、鮮明で視認性の高い映像表示が可能です。
さらに、LCD方式と比較して高輝度環境下でもより広い色域を確保できるため、速度情報やナビゲーション表示などの色再現性が向上します。その結果、ドライバーによる情報の識別性や認知効率が高まり、より直感的で安全な運転支援に貢献します。
光学効率:OSRAM OSTAR(TM) Projection Compact LEDは、DMD(Digital Micromirror Device)システム向けにエタンデュを最適化して設計されており、0.3インチ、0.46インチ、0.55インチのDMDイメージャーに対応しています。
この最適なエタンデュ設計により、LEDから放射された光を投影光学系へ高効率に結合できるため、放出光のより多くを映像形成に利用することが可能です。製品ラインナップは、さまざまな光学エンジンサイズや性能要件に対応しており、高い光利用効率を実現します。
また、最新世代の製品では光結合効率がさらに向上しており、放出された光子をより有効に活用できることから、従来世代と比較して投影画面の輝度を10~15%向上させることができます。
これにより、システム全体の光損失を抑制するとともに、大型光学系への依存を低減し、消費電力や実装スペースの面で効率的なシステム設計を可能にします。
輝度性能と日中視認性:プロジェクション用途向けに設計されたこれらのLEDは、非常に高い光出力を実現します。特にグリーンおよびブルーLEDでは、最大4.0A/mm2の高電流密度チップ技術を採用しており、小型チップサイズでありながら高輝度動作を可能にしています。
この高輝度性能により、強い日差しや車内外からの反射光など、厳しい照明環境下でもAR映像やHUDシンボルの優れた視認性を確保できます。
AR-HUD用途では最大20°×8°の視野角(FoV: Field of View)に対応し、日中環境においても15,000 cd/m2の表示輝度を実現します。
色再現性と設計自由度:OSTAR(TM) Projection Compact RGB LEDは、アンバー、グリーン(Converted Green)、ブルーの3つの発光チャネルを備えています。
このマルチチャネル構成により、設計者は色の混色を柔軟に制御できるため、色再現性や色域を向上させるだけでなく、ナビゲーション表示や警告表示などのシンボル設計においても、より精密な色制御が可能になります。
さらに、ストラクチャードチップ技術の採用により、高電流密度駆動時でも安定した性能を維持できます。
その結果、高い色再現性、優れた設計自由度、そして長期的な信頼性を実現します。これは、色ごとに明確な意味や役割が割り当てられるAR-HUDにおいて、安全性、ユーザーエクスペリエンス(UX)、規制適合の観点から極めて重要な要素です。
熱マネジメントと信頼性:これらのLEDは、熱設計を最適化したセラミックパッケージに実装されています。
このパッケージは発熱を効率的に拡散し、LEDチップからヒートシンクまでの熱抵抗を低減することで、高輝度動作時においても熱暴走や早期劣化を抑制します。
また、セラミックパッケージは熱マネジメント性能に優れるだけでなく、SMT(表面実装技術)による実装にも対応しており、生産性や製品信頼性の向上、さらには長寿命化にも貢献します。長年にわたり実績を重ねてきたこのパッケージ技術は、高い堅牢性を提供します。
温度変化に対する安定した性能、長寿命化、保守・交換コストの低減は、いずれも自動車用途において重要な要件です。
さらに、これらのLEDは最新のAEC-Q102 Annex 3規格に準拠しています。同規格はAutomotive Electronics Council(AEC)が光電子部品向けに策定したもので、過酷な車載環境における信頼性、安全性および性能を保証するための基準です。
OEMとの協業が市場のさらなる拡大を後押し
プロジェクション用途向けRGB LEDは、AR対応HuDを実現するための実用的かつ導入しやすいソリューションです。エタンデュを考慮したパッケージ設計によって光学系の小型化に貢献し、日中でも高い視認性を確保するために必要な輝度性能と色制御性能を提供します。また、レーザー方式で課題となるコヒーレンスやスペックルノイズの問題を回避できる点も大きな利点です。
一方で、その導入には光学設計、ドライバー回路、センサーフュージョンソフトウェアの緊密な協調設計に加え、安全性や各種規制への適合を検証するための厳格な評価が不可欠です。
現在、ams OSRAMは車載プロジェクション用途向けにLED製品だけでなく、光学設計やドライバー回路のリファレンスデザインも提供しており、AR-HUDが実証段階から量産可能な車載システムへと移行しつつあることを示しています。
LED技術の進化は次世代AR-HUDに不可欠な要素ですが、その普及にはOEMとの緊密な協力も欠かせません。ams OSRAMは世界各地域の主要OEMとの協業を強化し、中高価格帯車種へのARヘッドアップディスプレイの標準搭載を推進しています。こうした取り組みを通じて、高度なインテリジェントドライビング技術の地域展開と市場普及を加速させていきます。
OSTAR(TM) Projection Compact RGB LEDの詳細はこちらをご覧ください(※)。
(※) https://ams-osram.com/search?productSearch=true&filter_lifecycle_key_String_sortable=10-full-production&q=products%28KR+CSLNM1.23%2CKP+CSLNM1.F1%2CKB+CSLNM1.14%2CLE+A+Q8WP%2CLE+CG+Q8WP%2CLE+B+Q8WP%2CLE+A+Q7WN%2CLE+CG+Q7WN%2CLE+B+Q7WN%2CLE+A+Q7WR%2CLE+CG+Q7WR%2CLE+B+Q7WR%29

画像:ams OSRAM
ams OSRAMについて
ams OSRAM Group(SIX:AMS)は、革新的な光とセンサソリューションのグローバルリーダーです。デジタルフォトニクスのスペシャリストとして、優れたエンジニアリング能力と最先端のグローバルな製造能力を兼ね備え、お客様にデジタル照明やセンシングテクノロジーの多彩なポートフォリオを提供しています。
「光の力を感じよう」-当社の成功は、光が持つ可能性に対する深い理解を基盤としてきました。120年にわたり、自動車、工業生産、医療、コンシューマー向け電子機器などの市場に変革をもたらすイノベーションを創出してきました。OSRAMブランドの記念となる本年には、世界で約18,500人の従業員が、スマートモビリティ、人工知能、拡張現実、スマートヘルス、ロボティクスといった社会のメガトレンドに沿った先駆的なソリューションの開発に注力しています。これは、約12,000件の特許の取得・出願に反映されています。オーストリアのプレムシュテッテン/グラーツに本社を置き、ドイツ・ミュンヘンに共同の本社を設置しています。当グループは2025年に33億ユーロの収益を達成しており、ams-OSRAM AGは、スイス証券取引所に上場しています(ISIN:AT0000A3EPA4)。
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