ロボット・AI専門メディア『ロボスタ』は、ホンダの人間型ロボット『P2』『ASIMO』の開発に携わった竹中透氏を迎え、オンラインセミナー「開発者・竹中透氏が語るヒューマノイドの原点とフィジカルAI時代の未来」を11月25日に開催する。
1996年に発表されたP2と、フィジカルAIによって進化する2026年のヒューマノイドを対比し、約30年間の技術の進歩と変わらない課題を考える。
◆『ASIMO』の前身だけではない『P2』の存在
ホンダは1986年に2足歩行ロボットの研究を開始した。脚だけの実験機から研究を進め、1993年には腕と胴体を備えた『P1』を開発。1996年には、自立型の人間型2足歩行ロボット『P2』を発表した。
P2は、2000年に登場した『ASIMO』の前身として知られる。しかし、その歴史的な意味は、ASIMOにつながる試作機というだけではない。P2は、人間と同じような身体構造を持ち、人間の生活環境で活動するロボットの基本形を示した。現在、世界各国で開発が進むヒューマノイドにも通じる考え方だ。
2026年4月には、その技術的功績が評価され、米国電気電子学会(IEEE)の「IEEEマイルストーン」に認定された。これは、社会や産業の発展に大きく貢献した歴史的な技術を顕彰する制度だ。
◆1996年の技術革新、倒れずに歩くための制御
P2は全高1820mm、重量210kg。2本の脚と2本の腕を備え、制御用コンピューターやバッテリーなどを胴体に内蔵していた。外部から電力を供給するケーブルなしで歩行でき、階段の昇降や台車を押す動作なども実現した。
技術的な特徴は、単に2本脚で歩けることではない。歩行中の姿勢をリアルタイムで制御し、バランスを保つ仕組みにあった。
人間型ロボットは歩行中、片脚で身体を支える瞬間がある。床から受ける力や身体の傾きを把握し、多数の関節を協調して動かさなければ転倒してしまう。P2は、床反力制御、目標ZMP制御、着地位置制御などを組み合わせ、こうした問題に対応した。ZMPは、ロボットのバランスを制御するために用いる指標のひとつだ。
あらかじめ決めた動きを再生するだけでなく、身体に加わる力に応じて姿勢や動作を修正する。この技術は、現在のヒューマノイドにも通じる重要な基盤となっている。
◆日本のヒューマノイド研究にも影響
P2の技術は、1997年の『P3』、2000年のASIMOへと発展した。P3では小型軽量化が進み、ASIMOでは人間の生活空間で活動することを重視した設計が採用された。ホンダの研究は、歩行能力の実現から、人間と共存するロボットの開発へと進んでいった。
その影響はホンダ社内にとどまらない。1998年には、通商産業省(当時)などによる「人間協調・共存型ロボットシステム研究開発(HRP)」が始まった。HRPは、人間型ロボットを実際の作業やサービスに活用するための研究開発プロジェクトだ。
このプロジェクトで開発された『HRP-1』は、ホンダのP3を基にしていた。その後、産業技術総合研究所などによってHRPシリーズの研究開発が進められた。
産業技術総合研究所は、1996年のP2発表以降、日本だけでなく世界でもヒューマノイド研究が活発になったと説明している。P2は、ASIMOにつながるホンダの技術開発だけでなく、日本のヒューマノイド研究の発展を考えるうえでも重要な存在となった。
◆2026年のヒューマノイド、進化した知能と変わらない身体の課題
P2の登場から30年。現在のヒューマノイド開発では、生成AIやVLA(視覚・言語・行動を結び付けるAI)、世界モデルなどが注目されている。
1996年のP2では、倒れずに歩くための運動制御が大きな課題だった。2026年のヒューマノイドでは、周囲の状況を理解し、作業を判断し、環境の変化に対応する知能の開発が進んでいる。工場や物流施設などで、人間に代わって作業することも想定されている。人間向けに作られた階段や通路、設備を利用できることは、人間型ロボットの利点の一つだ。
ただし、AIが高度化しても、実際の身体を安全に動かすための課題がなくなるわけではない。床から受ける力を測定し、身体の姿勢を保ち、多数の関節を協調させる。人や物との接触にも対応する。こうした物理的な制御は、フィジカルAI時代にも必要だ。
1996年のP2と2026年のヒューマノイドを比較すると、知能の実現方法は大きく変わったいっぽう、人間の環境で安全に動くための基本的な課題は共通している。
◆開発者が振り返る30年、フィジカルAI時代の課題
今回のセミナーに登壇する竹中透氏は、ホンダの2足歩行ロボット開発に初期から携わり、P2やASIMOの開発で中心的な役割を担った。本田技術研究所の元主席研究員で、現在はワークロイド・ユーザーズ協会(WUA)の特別アドバイザーなどを務める。
セミナーでは、歩くことよりも倒れないことに着目した理由や、硬い構造から柔らかい構造への発想の転換など、当時の開発思想を取り上げる予定だ。
後半には、WUA副会長の田中純氏が登壇し、ロボットを利用する側から見た社会実装について紹介する。
さらに、竹中氏、田中氏、『ロボスタ』の神崎洋治編集長が、P2やASIMOの時代から何が変わり、何が変わっていないのかを議論する。生成AIやVLAなどによる知能の進化、AIだけでは解決できない身体の課題、日本のロボティクス技術の可能性などがテーマとなる。
セミナーは11月25日にオンラインで開催される。主催はイード。一般参加費は1万5500円(消費税込)だ。
★セミナー詳細・申込
開発者・竹中透氏が語るヒューマノイドの原点とフィジカルAI時代の未来
https://robotstart.info/article/2026/10/07/382492.html










