富士フイルムは、半導体材料事業の中核会社の富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(FFEM)の静岡工場内に建設していた開発・評価用の新棟が竣工し、稼働を開始したと発表した。
近年、AIや5G、IoTの普及により半導体市場は急速に成長しており、特にAI半導体などの先端半導体の需要が急増している。富士フイルムの半導体材料事業は、2021年度から2024年度にかけて売上が約1.7倍に拡大し、グループの成長を牽引する中核事業の一つとなっている。
こうした成長を支えるため、同社は2021年度から2024年度にかけて1000億円以上の設備投資を実施。2025年度から2026年度にかけてさらに1000億円以上の投資を計画している。
静岡工場の新棟では、高い清浄度のクリーンルームに先端評価機器を設置し、開発・生産のための品質評価機能を強化する。また、半導体材料に含まれる微粒子を検査する工程にAI画像認識技術を導入し、その分析精度を向上させるなど、AIを活用した高度な品質管理体制を構築する。
さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する部門を新棟に配置し、製造工程におけるAIなどのデジタル技術の活用拡大を支援することにより、製品の品質向上と安定供給を実現する。
BCP(事業継続)対策として、RC造柱頭免震構造を採用し、水害に備えクリーンルームを地上12mに配置した。
静岡工場は、日本市場に対してだけでなく、グローバルな研究開発・生産拠点と連携しながら、顧客の最先端プロセス技術開発を支援している。今回の新棟立ち上げにより、EUV(極端紫外線)リソグラフィ用レジストやArF、NILなどの先端レジスト、さらにはPFASフリー材料や世界トップシェアの「Wave Control Mosaic」の開発を加速し、次世代半導体の進歩に貢献する。
また、これまでの投資により、次世代半導体パッケージのコア材料のポリイミドなどの開発・量産体制を強化している。今後も、AI半導体向けの需要増などに対応するため、生産能力の増強と多様な顧客ニーズにこたえる技術開発を進める。
富士フイルムは、静岡工場新棟への投資を通じて、半導体材料の開発・生産体制を一層強化し、2030年に向けて市場が倍増すると予測されるAI半導体をはじめとした先端・次世代半導体市場の成長を牽引する。これにより、半導体材料事業の売上拡大と富士フイルムグループ全体の成長を加速していく。



