WHILL(ウィル)は8月7日、法人向け事業「WHILLモビリティサービス」の無人貸出を可能にする新たな形態を発表した。高齢人口の増加や法改正を背景に、広い敷地を有する施設での区域内アクセシビリティ環境整備が求められている。
社名ともなっている『WHILL』は電動の1人乗り近距離モビリティだ。シニアカーや電動車椅子の発展形で、近距離(歩行領域、屋内、施設内)移動の利用を想定する。“歩けるけれど、1km歩くのはたいへん”といった人向けだ。WHILLモビリティサービスは、施設内で来場者にWHILLをレンタルするための法人向け事業だ。
●近距離モビリティ導入時の課題
新サービスでは、スマートフォンアプリ「WHILLレンタル」を通じた機体の無人貸出・決済の仕組みを導入する。有人での取り扱いとなるWHILLモビリティサービスは2023年6月より提供されており、今回、それに無人貸出・決済機能が追加された形だ。施設環境に応じて柔軟に対応できるパッケージとして提供を開始する。
WHILL社の上級執行役員で日本事業部の池田朋宏事業部長は、WHILLモビリティサービスの導入を進める中で施設運営者から「人手が足りず、有人での貸出対応が難しい」「決済システムがない」といった声があったという。こうした要望をもとに、無人貸出を可能とするスマートフォンアプリを開発したそうだ。WHILLの想定ユーザーは約1200万人、WHILLモビリティサービスの対象となる施設は約10万カ所あるという。

●施設内モビリティは施設が用意する
レンタルアプリは無料で利用できる。マップにはWHILLを借りられる施設や場所、利用できるWHILLのモデルや貸出方法が表示されるので、外出先におけるWHILLモビリティサービスの有無を事前に調べることができる。池田事業部長によると、施設内を快適に移動するサービスを施設に求める例が増えており、施設内に近距離モビリティサービスがあるかどうかで目的地を決めることもある。
貸出時は、利用する機体と利用プランを選択して決済完了した上、機体に貼付されたQRコードを読み取ることで解錠、利用を開始する。乗車中はアプリから施錠も可能で、手洗いや買い物など機体から一時的に離れる際も安心だ。利用後は貸出場所に機体を戻し、アプリで返却手続きを行なう。
●ユニバーサルツーリズム
また発表会では、高齢化で拡大するユニバーサルツーリズム市場における「快適な移動のケア」についても有識者が解説した。
山陽学園大学の中村敏氏は、観光地や大型施設での歩行領域の移動サービスの社会的ニーズや市場動向について説明。超高齢化社会における課題として、広い敷地内を歩き回ることが難しい高齢者のためにユニバーサルツーリズムの重要性を強調した。