インド国産化の進め方、事業の核の築き方【インド・新自動車大国の素顔】

Yulu Bike
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2022年に100万台を突破したインドのインド市場は、本年も著しい伸びを見せている。その背景にはインド中央政府による振興策があるが、一方でこれに頼らず独自の事業展開を行ってきた事業者もいる。連載「インド・新自動車大国の素顔」の本記事では、インド国内での国産化を果たし、他社との差別化を実現したYulu Bikeの取り組みを紹介する。

◆Yulu Bikeが完全国産化モデルを展開

本連載で度々紹介している新興モビリティ・サービス事業者のYulu Bikeだが、2019年末頃からベンガルールの街中に配備が始まった電動自転車 『Yulu Miracle』は中国産の車両だった。

しかし、その輸入車両でサービス展開を進める傍ら、同社は車両各部の改善・機能追加やインド国産化に向けた各種の試みを重ねていた。地場二輪大手のBajaj Autoとの協業に基づいて2023年3月に発表した最新型の車両は、輸入依存度ゼロの完全国産化モデルだ、と報じられている。

出展:DIGITIMESasia「India's Yulu nears zero-import dependence with Bajaj partnership」(https://www.digitimes.com/news/a20230717VL204/india-vehicle-partnership-yulu.html?chid=13)

この記事でグループCEOのAmit Gupta氏が明かしたところによれば、2022年9月にカナダに本拠を置く自動車部品大手マグナ・インターナショナルからUSD 77mil(約110億円)の出資を受けて以降、Yulu Bikeは改めてもう一段、大きな進化を遂げたという。従来通り車両開発およびシェアードサービス事業を担う “Yulu” と、マグナ社との合弁としてバッテリー・充電周りのオペレーションを担う “Yuma” に体制を分けたことが何より象徴的だ。Yuluが開発した新型車両では輸入依存度ゼロを達成した一方、Yumaが扱うバッテリーについては依然として電池セルを外国産に頼っているのが現状だ。向こう1~2年内にバッテリーパックについても国産化を目指しているといい、車両開発で完全国産化を果たしたのと同様の試みを進めている様子だ。


《大和 倫之》

大和 倫之

大和倫之|大和合同会社 代表 南インドを拠点に、日本の知恵や技術を「グローバル化」する事業・コンサルティングを展開。欧・米の戦略コンサル、日系大手4社の事業開発担当としての世界各地での多業種に渡る経験を踏まえ、シンガポールを経てベンガルール移住。大和合同会社は、インドと日本を中心に、国境を越えて文化を紡ぐイノベーションの実践機関。多業種で市場開拓の実務を率いた経験から「インドで試行錯誤するベースキャンプ」を提供。インドで事業を営む「外国人」として、政府・組織・個人への提言・助言をしている。

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