クアルコムは9月22日(現地時間)、ニューヨークで業界関係者や投資家に向けてプレスカンファレンスを開催した。同社のオートモーティブ分野へのコミットと展望を周知させるものだが、業界エコシステム(サプライチェーン)の不可逆な変革を強く示唆する内容だった。
◆クアルコムはなぜ自動車業界にコミットするのか
5年ほど前、クアルコムのオートモーティブ分野での貢献は、EVのワイヤレス給電システムなど一部であった。その後はCESや各国モーターショーでも、コネクテッドカーのECUや通信モジュール、各種センサー、AIなどE/Eアーキテクチャ全般に適用可能なソリューションにシフトしている。
クアルコムはスマートフォンなどのRF(無線通信モジュール)やプロセッサのSoCを開発、提供するファブレスの半導体デザインインテグレーターだ。同社のSnapdragonチップセットは、iPhone以外のスマートフォンの多くが採用している。心臓部のチップセットを自社で開発するアップル(iPhone)を除き、スマートフォンの性能は搭載しているSnapdragonのグレードや世代によって決まるといってよい。
クアルコムでは、モバイル、自動車、IoTを「コネクテッドインテリジェントエッジ」と呼び、その市場規模は次の10年で7千憶ドル規模になるとし、投資を進めている。インテリジェントエッジとは、クラウドにつながるデバイス群のことだ。従来のクラウドエッジデバイスは、PCやスマートフォンくらいだったが、IoTの普及により自動車をはじめ家電や工場、カメラやセンサーネットワークなどあらゆるモノがネットワークにつながり(conected)クラウド上のサイバー空間にメタ現実ともいえるバーチャル空間を構築している。
◆CASE車両をカバーするポートフォリオ
もともと携帯電話やWi-Fiなどのワイヤレスチップセットに強かったクアルコムだが、CPU、GPUのようなプロセッサデザインにも強い。スマートフォンでは本体に高度なアプリケーションを処理できる演算リソースが必要なので、RF(無線周波数)部とプロセッサのほか、メモリやセンサーなどを統合したチップセット(SoC)を手掛けるのはデザインインテグレーターとして必然だからだ。
したがって、4G/5Gなどのモバイル通信技術、Wi-Fi、Bluetooth、GNSS(GPS)等の技術やソリューションを持ち、クラウドエッジのコンピュータとしてのプロセッサも提供できるクアルコムは、CASE車両(コネクテッド、自動運転)に対する有効なソリューションを持っていることになる。