物流コストインフレ時代の今こそ、ラストワンマイルのDXを

物流コストは2014年以降上昇傾向で推移

スマートメーターの活用による再配達の低減

ダイナミックプライシングによる負荷の平準化

ラストワンマイルで得られたデータの収益化

厳しい事業環境であるからこそ生まれるイノベーション

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  • 「AI活用による不在配送問題の解消」に向けた実証実験
  • 日本郵便がInnoviz Technologiesが開発したLiDARセンサーを配達車両に搭載
  • AGF(Automated Guided Forklift)イメージ

昨今、実に様々な企業が値上げを発表している。原油をはじめとするエネルギー価格の上昇がその背景にあるわけだが、ニュースなどでは「物流費や原材料価格の高騰を受け…」と報じられることも多い。

生鮮食品のように「原材料」がない商品も存在するが、あらゆるモノの供給には「物流」が必要だ。「経済の血脈」とも称される物流のコストアップは、ほとんど全ての企業に少なからぬ影響を及ぼしているのである。

物流コストは2014年以降上昇傾向で推移

では、実際のところ、物流コストはどの程度上がっているのだろうか。バブル経済の崩壊以降、トラックの運賃は長らく微減傾向にあったが、2014年頃から上昇に転じ、現在ではバブル期よりも10%ほど高い水準にある。まさに「物流コストインフレ」と称すべき状況にあるといってよいだろう。

ラストワンマイルの担い手である宅配便のインフレ率は、それを遥かに上回る。10年前と比べて40%近く上昇しているのだ。あらゆる商品・サービスの中でも突出した水準である。

実際、送料の値上げに踏み切ったECサイトは少なくない。「送料無料」を謳うECサイトも存在するが、宅配コストが商品価格に含まれているがゆえに、「送料がかかっていないように見えるだけ」である。宅配コストが今後も上がり続ければ、送料や商品価格に転嫁される。ECの普及によって、生活の利便性・快適性が高まったことを考えると、宅配コストがさらに上昇することでの社会への影響は看過し得ないはずだ。

もちろん、全産業平均と比べて10~20%程度低いトラックドライバーの賃金水準を引き下げることが正しい解決策とはいえない。さればこそ、ラストワンマイルのDX(デジタルトランスフォーメーション)は急務といえる。デジタル技術の活用による宅配ビジネスの革新は、単に宅配事業者の競争力を高めるだけではなく、今ある便利で快適な社会生活のサステナビリティを高めるためにも必要なのである。


《小野塚 征志》

株式会社ローランド・ベルガー パートナー 小野塚 征志

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。 ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、成長戦略、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革、リスクマネジメントをはじめとする多様なコンサルティングサービスを展開。 内閣府「SIP スマート物流サービス 評価委員会」委員長、経済産業省「持続可能な物流の実現に向けた検討会」委員、国土交通省「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」構成員、経済同友会「先進技術による経営革新委員会 物流・生産分科会」ワーキンググループ委員、日本プロジェクト産業協議会「国土創生プロジェクト委員会」委員、ソフトバンク「5Gコンソーシアム」アドバイザーなどを歴任。 近著に、『ロジスティクス4.0-物流の創造的革新』(日本経済新聞出版社)、『サプライウェブ-次世代の商流・物流プラットフォーム』(日経BP)、『DXビジネスモデル-80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略』(インプレス)など。

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