カンバン方式・ジャストインタイムの脆弱性…完成度が高いがゆえの脆さ

日本の生産システムを取り入れた製造ライン
  • 日本の生産システムを取り入れた製造ライン
  • トヨタ自動車元町工場

半導体不足によるサプライチェーンの分断。ランサムウェアなどシステムダウンによる製造計画の破綻。安全保障やロシアによるウクライナ侵略など外交や地政学による経済への干渉。さらにはエネルギー供給に関わる電力制限。

高度成長や安定成長はもはや古き良き時代の幻想でしかない。予測不能でなにが起きても不思議がない現在。とくに自動車業界は100年に一度と言われる変革期の真っただ中にいる。これまでの当たり前や常識を前提とした経営はリスクの塊でしかない。

パンデミックがカンバン方式の転機に

コロナパンデミックによる世界的なロックダウンの影響があったとはいえ、半導体不足は世界中のOEMに生産調整、工場停止を引き起こし、余波(生産調整)はいまも続いている。ランサムウェア感染などのシステム障害では、たとえ製造ライン(のコンピュータ)が無傷でも受発注システム、在庫管理システムが止まるだけで、最終組み立てラインまで止めてしまう。似たような状況は、2021年テキサス大寒波でも起きている。樹脂製品の製造ストップが、バンパーやステアリングの部品が入らなくなりクルマの生産が止まった。

なぜこのような現象が起きるのか。それだけ世の中、不測の事態が起きやすくなったからという見立ては間違っていないが、視点を変えて、既存のシステムやしくみが現代社会のしくみやスピードに合っていないのではないか。わかりやすい表現をすれば「極限まで在庫を抑え無駄を排除したジャストインタイム(JIT)やカンバン方式が、時代のそぐわなくなってきているのではないか」ということだ。


《中尾真二》

編集部おすすめのニュース

特集