デッドニングで音が変わるポイント[サウンドユニット セッティング法]

サービスホールを制振材にて塞いでいるところ。
  • サービスホールを制振材にて塞いでいるところ。
  • サービスホールを制振材にて塞いでいるところ。
  • 「制振材」の一例(フェリソニ)。
  • 「制振材」の一例(フェリソニ)。
  • 「制振材」の一例(ドクターアルテックス)。
  • 「制振材」の一例(ドクターアルテックス)。

カーオーディオでは、良い製品を使えば良い音が得られるかというと、必ずしもそうとは限らない。取り付け方でも音の良し悪しが変わってくる。当連載では、そういった「取り付け作業においての音が変わるポイント」を1つ1つ解説している。

現在は“デッドニング”について説明している。なお“デッドニング”とは、クルマのドア内部の音響的なコンディションを整えるための作業だ。クルマのドアは、音響機器としては設計されていないので、音響的なコンディションが劣悪だ。それを是正するための作業が“デッドニング”、というわけだ。

で、“デッドニング”では実際にどのような作業が行われるのかを解説している。ここまで説明してきたとおり、まずはスピーカーの真裏で吸音や拡散や制振が行われ、さらにはアウターパネルの中で共振しやすい部分に対して制振作業が施される。

そしてその後にはいよいよ、ドアの内側の鉄板(インナーパネル)に対するメニューが実行されることとなる。

なおインナーパネルに対しては、1つ、非常に重要な工程が存在している。それは「サービスホールを塞ぐ」というものだ。これを行う目的は主には2つある。1つは「背圧が表側に回り込むのを防ぐこと」で、もう1つは「背圧が内張りパネルを共振させるのを抑制すること」だ。

背圧とは、前回までの記事中でも説明してきたとおり、スピーカーの裏側から放たれる音エネルギーのことを指す。で、これはさまざまな弊害をもたらすのだが、表側にまで到達すると、表側の音を打ち消すというやっかいな現象を引き起こす。

このようなことが起こる原理は以下のとおりだ。スピーカーの裏側から放たれる音は耳で聴く分には表側の音と同じ音なのだが、音波としては真逆の状態となっている。なぜなら、スピーカーの表裏では振動板の動き方が真逆の関係にあるからだ。そしてこのように音波として真逆の関係にある音同士が同一空間で混じり合うと、お互いを打ち消し合うキャンセリングという現象が引き起こされる。

ちなみに、ホーム用のスピーカーはスピーカーユニットがボックスに取り付けられているわけだが、このボックスはまさしくキャンセリングを防ぐためのものと言って良い。スピーカーユニットをボックスに取り付ければ、裏側の音を箱の中に閉じ込められる。

対してクルマのドアは、密閉性が高くない。特にインナーパネルには「サービスホール」と呼ばれているメンテナンス用の穴が空いているので、裏側の音が内張りパネルまで回り込む。で、その内張りパネルは一応、裏側の音をブロックする役目をある程度果たすが、それでもパネルを介して表側に音を伝えてしまう。結果、少なからずキャンセリングが引き起こされる。しかしサービスホールを制振材等を使って塞げば、その弊害を少なくできる。そしてさらには、内張りパネル自体の共振も抑制できる。

この作業をやるかやらないかの差は大きい。“デッドニング”の内容を軽めにすれば取り付けコストを下げられるが、できればここまではやっておきたい。そうすることで聴こえ方が大きく変わる。参考にしてほしい。

今回は以上だ。次回はインナーパネルに施す他の作業内容について解説していく。お楽しみに。

《太田祥三》

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