缶入りのカレー飲料『カレーな気分』をもう試しただろうか。「カレーな気分中辛170gリシール缶」はポッカサッポロフード&ビバレッジ(ポッカサッポロ)から8月23日に発売され、3か月で当初の想定を上回り、11月17日時点で出荷本数170万本を突破した。
「カレーな気分」は、香味野菜とビーフとポークの旨みが広がる中辛のカレースープだ。ポッカサッポロのグループ会社であるスパイスメーカー、ヤスマのスパイスも使用した、10種類のスパイスがスープに溶け込む。「カレーを少しだけ食べたい」時にそのまま飲め、おにぎりやパンといった食事に合うので、ランチなどで一品としても楽しめる。自販機価格150円、店頭価格151円(消費税込)。
◆ヒットした理由、開発者が分析
ポッカサッポロの開発担当である藤田良美さんは、ヒットの理由を以下のように分析している。
●ありそうでなかったものの新しさ・驚き(=手にとってみたくなるキッカケ)があった……「“カレーは飲み物”とする言葉や外食店もあるが、自販機やコンビニエンスストアで手軽に買えるアイテムとしてはありそうでなかった。新しさや驚きを感じられて手に取ってもらえた」
●食事の一品としてのシーンを獲得できた……「これまでの缶スープは『小腹満たし』のシーンが中心だった。『カレーな気分』では、おにぎりやパンと一緒に食事の一品になる『食事系スープ』にしたことで、新たな食シーンを獲得できた」
●カレーというメニュー自体のポテンシャルが高かった……「カレーは、2人に1人が月2~3回以上カレーを食べるくらいの人気メニュー。そこに着目して商品を企画した」
藤田さんは2012年入社。営業を経験の後、現在は加工食品事業部でマーケティング業務を行なう。「スープからの領域拡大」するための戦略立案、商品開発を行なっている。

◆開発物語「工場がない」
テレビである映像が流れた。それはレトルトカレーにストローをさして飲みながら歩く人の姿だった。「この食べ方であれば、一緒におにぎりを食べると口の中でカレーライスになる」と社員がひらめいた。ドリンクタイプであれば手軽にカレーを楽しめ、新しい食べ方の提案になる。カレーは飲み物というけれど、市販商品ではあまりみたことはない。「これはチャンス」とカレー飲料の開発が始まった。
まずは味作りから。「缶を一本飲み干すためには辛すぎるとダメ。また、とろみが弱いとカレーとして充実感がない、逆にとろみが強すぎるとのどごしが悪くなる。辛さととろみとのバランスに注意した」と藤田さんはいう。前例がないためスパイスの配合から自社で開発、ヤスマにもアドバイスをもらい、味作りだけで1年以上かかったそうだ。
味が決まったところで「作れる工場がない」。これが開発で最大の問題だったという。カレーはにおいや色が強いので扱いづらいのだ。発売は延期。「そのため飲料タイプがなかったのかも。しかし工場の問題をクリアできれば、市場でユニークな存在になる」と、開発は続けられた。

「開発する時間が増えたとポジティブにとらえた」とポッカサッポロ社フード&ビバレッジ研究所の中村里香さん。「粉末スープとリキッドスープを長年研究してきた社内には、スープのエキスパートたちがいる。その方たちにもアドバイスをもらいながら製造方法を検討した」。そしてポッカサッポロで独自の製造方法を考案し、工場での製造を可能にした。通常の商品開発とくらべて4倍の期間だったという。
藤田さんは「ちょっとだけカレーを食べたいというニーズに応えたかった。さらに弊社は、ドリンクスタイルの手軽に摂れる食事であるRTED=READY TO EAT DRINKという新カテゴリーを作ろうとしている。『カレーな気分』はこのカテゴリーの先駆的な商品になるので、あきらめたくなかった」と語る。
◆意外?! 食べ合わせランキング
ポッカサッポロでは社員で試食会を開催し、藤田さんは『カレーな気分』と合う食べ合わせランキングを作成した。
●第1位:アメリカンドック……油で揚げてあり、カレーパンのような味わいに。ソーセージがスパイシーになり楽しめる。
●第2位:納豆巻き……「カレーな気分」の中辛のスパイシーさが、納豆と組み合わせることでマイルドになる。
●第3位:チャーハンおにぎり……カレーピラフのような味になる。チャーハン、カレー、ピラフ、3種の味を楽しめて得した気分。